2006 Fiscal Year Annual Research Report
相互作用にフラストレーションを導入したモデルに基づくガラス転移現象の機構解明
Project/Area Number |
06J10512
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新谷 寛 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ガラス転移現象 / 二秩序変数モデル / フラストレーション / ボゾンピーク |
Research Abstract |
ガラスは工業的に非常に重要であるが、「なぜ過冷却液体(融点以下の液体)は、構造的には融点以上の液体とほぼ同様であるにもかかわらず、緩和時間が温度の低下と共に急激に増大し、やがて運動が凍結して、液体の構造を維持したままガラス状態へ転移するのか」という、ガラス転移の基礎的メカニズムに対する回答は未だに得られていない。この問題に対し我々は、「局所安定構造形成による短距離秩序化」と「結晶化による長距離秩序化」との競合によるフラストレーションが過冷却液体には存在し、それがガラス転移現象の本質と深く関わっているという「二秩序変数モデル」を提案している。そこで、相互作用ポテンシャルに上記のフラストレーションを導入することで、結晶化からガラス化までを統一的に扱えるモデルを構築した。このモデルを分子動力学法により解析することで、上記の二秩序の競合から生じる「結晶的中距離秩序」(有限の寿命を持った過渡的なクラスター)が過冷却液体のダイナミクスのスローダウンと深く関わっていることが明らかにできた。このことは、ガラス転移と結晶化が不可分の関係にあることを示している。 また、ガラスにはボゾンビークというデバイの状態密度(低温での結晶の振動状態密度を良く記述できるモデル)よりも過剰の振動状態密度がTHz領域に存在することが知られているが、ボゾンピークがガラス転移現象と関連があるのかどうかや、その起源に関しては未解明のことが多い。我々は、圧力やフラストレーションを制御することで、ボゾンピーク振動数を幅広く変化させ、系統的に研究することにより、ボゾンピーク振動数と横波の音波のIoffe-Regel limit(ガラスのランダムネスの影響のため、音波が強い散乱を受け伝播できなくなる振動数)とに深い相関があることを発見した。このことは、ガラス(非晶質)の振動ダイナミクスの理解に大きく寄与するものと考えられる。
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