2007 Fiscal Year Annual Research Report
自己集合性中空錯体を用いたスピン系の設計および外部刺激による制御
Project/Area Number |
06J10518
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中林 耕二 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教
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Keywords | 自己集合 / スピン / 有機ラジカル / ESR / ホスト-ゲスト |
Research Abstract |
自己集合性中空錯体の内部空間を活用した有機ラジカル分子の配列制御とそれに基づく新奇なスピン系の構築を目的とし、次の結果を得た。 三角パネル状の安定ラジカル配位子とカドミウムイオンから、ゲスト交換可能なネットワークスピン錯体を合成した。錯形成時にテンプレートとして働く結晶溶媒を変えることで二次元ネットワーク錯体、三次元ネットワーク錯体を作り分けることができ、その構造変化に伴い磁性が変化することがわかった。また二次元ネットワーク錯体では、結晶状態を保ちながらゲスト交換が可能であることがわかった。ニトロベンゼン/メタノール溶液中で硝酸カドミウムとラジカル配位子Lを拡散させると錯体[Cd(L)(NO_3)_2(H_20)]_nの単結晶が収率85%で得られた。この錯体はカドミウム4個、配位子4個からなる六角形が連なった二次元シート構造をとり、それが交互積層した構造を有する。ニトロベンゼンは層間に挟まる形で存在し、配位子とπ-πスタッキングしていることがわかった。この錯体の磁化率温度変化を測定したところ、3.6Kに極大をもち配位子間に比較的強い反強磁性相互作用(J/k_B=-2.8K,Bonner-Fisher model)が働いていることがわかった。このニトロベンゼンは1,4-ベンゾキノンに結晶状態を保ったまま交換可能であり、ゲスト交換にともない、スピン量が1/3程度減少し、常磁性的に振る舞うことが磁化測定より確認された。これは、ドナー性の配位子(E_<l/2>=+0.48V)とアクセプター性(E_<1/2>ニ-0.48V)のベンゾキノンが酸化還元反応を起こしラジカルが失活したことに由来すると考えられる(GC-MSよりベンゾキノンの還元体であるハイドロキノン(分子量110)に由来するピークが検出された)。一方、クロロホルム/メタノール溶液中で得られる錯体は、クロロホルムが立体的なテンプレートとして働き、二次元シート間が結合で結ばれた三次元構造をとり常磁性的な振る舞いをすることがわかった。
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Research Products
(1 results)