2007 Fiscal Year Annual Research Report
初期瑜伽行派における三性説の研究-『大乗荘厳経論』を中心として-
Project/Area Number |
06J10627
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 訓典 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 三性説 / Mahayanasutralamkara / Madhyantavibhaga / nimitta |
Research Abstract |
本研究においては、初期喩伽行派における三性説、及びそこにおけるMahayanasutralamkara(『大乗荘厳経論』)の位置づけの解明に当たり、最も基本的な概念の一つであるnimittaに焦点を当てて研究を進めることとした。このnimittaという語は、広く原因・特徴・根拠などを意味する語であるが、単に三性説との関連のみならず、特に同学派の主要学説の一つである五事説の一項目としても列挙されるものであって、その五事説と三性説との関連という意味でも極めて重要な概念である。 本年度の研究では、Mahayanasutralamkara と Madhyantavibhaga(『中辺分別論』)における nimitta の扱いに関して、両論書に対する Sthiramati(安慧)の注釈であるSutralamkaravrttibhasya と Madhyantavibhagatikaの記述を踏まえて、詳細な考察を加えた昨年度の成果を踏まえた考察を深めるとともに、Mahayanasutralamkaraの骨子を継承し、初期鍮伽行派の学説を大成した Mahayanasamgraha(『摂大乗論』)及びそれに対する二つの注釈との比較考察を行い、その過程において、Mahayanasamgraha において、識の対象としての部分として用いられている場合のnimittaと識自体との関係が、従来の理解とは若干異なることなどを明らかにできた。また以上の考察は、初期喩伽行派におけるMahayanasutralamkaraの位置づけにあたり、nimittaという観点から解明を試みたものであり、今後の多面的な解明のための研究の一つの基盤となるものであると考えている。
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Research Products
(3 results)