2006 Fiscal Year Annual Research Report
ルネサンス宗教思想研究:ジョヴァンニ・ピコの「人間の尊厳」の思想を中心に
Project/Area Number |
06J10629
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
比留間 亮平 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ルネサンス / 思想史 / 中世哲学 / イタリア / ピコ・デラ・ミランドラ / 新プラトン主義 |
Research Abstract |
昨年度は本研究計画にとっての第1年度目であったが、全体として本研究の主たる対象であるジョヴァンニ・ピコ・デラ・ミランドラの一次資料の読解に大半の時間を費やすこととなった。 昨年度の4〜9月期、10〜3月期における研究状況はそれぞれ以下の通りである。 ・4〜9月期 ピコの『ヘプタプルス』を読み進め、その分析を行った。 この著作は創世記注解の形を取りながらピコが宇宙論、人間論を述べる哲学的、神学的な著作であるが、研究の結果、この著作を支配しているのが諸世界の階層的秩序を重視するプラトン主義的な「調和の理論」であること、そしてピコの人間論も人間の自由の主張よりもむしろ諸世界との調和に重点を置いていることが確認された。 この研究の成果は、昨年9月に開催された日本宗教学会において「ピコ・デラ・ミランドラにおける宇宙と人間」と題して発表された。 ・10〜3月期 ピコの『900箇条の提題集』を読み進め、その分析を行った。 この著作は数十人にも上る古今東西の哲学者の学説を収集し、分析するという形でピコが一種の学問改造計画について述べるものであるが、研究の結果、ピコが諸哲学の中でプロクロスのヘナデスの理論やカバラーのセフィロートの理論といった魔術的思想に転化させることが容易なものを特に重視していること、そしてピコの哲学の核心部分も魔術的思想に強く影響されていることが確認された。 この著作の性質上、古代、中世の諸哲学に関する広範な予備知識が必要となったため、それらの文献の入手と読解に時間を要し、昨年度中に成果を発表するまでには至らなかったが、本研究の成果は現在執筆中の論文「ピコ・デラ・ミランドラにおける魔術的神秘思想」において発表予定である。
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