2006 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀フランスの詩人ボードレールの詩作における問題意識
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06J10641
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 雄志 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 文学研究 / フランス / 近代詩 / リベルタン文学 |
Research Abstract |
当年度の研究計画に即し、フランス・パリ第4大学、フランス近代詩専門家アンドレ・ギュイヨー教授に指導を請いながら、当地での文献・資料収集に終始した。具体的研究手段としては、当研究者の研究対象となる18・19世紀の文献、特に近年になっても校訂版やファクシミリ版さえ出版されず、日本の図書館にも所蔵されてない作品を、パリの国立図書館や研究機関等で調査し、必要に応じて収集した。日本に留まっていたのでは入手することのできない希少なアーカイブに触れることで、研究対象に関係するデータが蓄積され、理解が深まった。しかしながら、当初の1年間で上げようとしていた成果の見通しの変更を迫られることとなったため、フランスでの研究指導委託期間を延長し、来年度も海外での研究・調査を続け、同時に日本での研究成果の発表を計画している。 成果としては、近代詩に強い影響を与えたボードレールの特色を、リベルタン(自由思想)文学、極端な例ではポルノグラフィーにまで近付いていた好色文学などの伝統から読み直す試みの一つとして、フランス革命前後の時期に活躍した詩人エヴァリスト・パルニーとの影響関係について考察した論文を現在準備中である。 リベルタニスム(自由思想)を標榜し世俗・宗教的権威に挑発的な文学活動を行った思想家・作家たちとアンシャン・レジーム(旧体制)との関係を、ボードレールとその作品を検閲した第二帝政期の当局との関係に照らし合わせることで、『悪の華』裁判を例として、文学作品解釈において政治・思想の占める位置を考察する論文を同時に準備中である。
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