2008 Fiscal Year Annual Research Report
「アメリカ都市文学」の形成:1865年から1945年のニューヨーク小説を中心に
Project/Area Number |
06J10646
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 有希 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アメリカ・リアリズム小説 / 20世紀アメリカ文学 / ニューヨーク / アメリカ文化研究 / 文学における都市表象 |
Research Abstract |
平成20年度は、研究課題である「アメリカ都市文学」、すなわち、19世紀後半から20世紀初頭のアメリカで起った近代都市の発展、またそこにおける人間の経験を主題としたリアリズム文学の成立と発展を検討した。特に、全体の研究計画の後半にあたる、主に1900年から1945年までのニューヨークを扱った文学作品及び文化表象に焦点を当て、アメリカ都市文学、アメリカ文化、都市論関連の基礎文献及び資料を調査した。 第一に、ジョン・ドス・パソスの諸作品、特に『マンハッタン乗換駅』を精読し、ドス・パソスの都市描写の特徴である、建物や街路の細部の描写を積み重ねて全体を構成していく方法を研究した。そのうえ、スコット・フィッツジェラルドら同時代のモダニズム作家の都市描写、また、シオドア・ドライサーやイーディス・ウォートンを中心としたアメリカ自然主義リアリズム作家の都市描写との比較を行い、ジャンルの違う作品の間に強い連続性があることを確認した。 第二に、現代のニューヨーク都市小説、特に世紀転換期の都市を主題とする歴史小説を広く精読し、共通の主題として現れる都市の過去と現在の連続性と断絶の感覚に注目した。中でも、スティーブン・ミルハウザーの『マーティン・ドレスラーの夢』においては、当研究が着目する、世紀転換期のニューヨークにおける環境の変化と人間の体験の変化の有機的な関係が強調されていることを発見した。この研究の一部は、平成20年3月にニューヨーク市立大学大学院英文科学会において口頭発表した また、同時代の映画、アニメーション、広告、建築などについて調査を行い、各メディアに共通して「都市のスピード感」の表現に重点が置かれていることに注目し、この観点から空間と建築の関係を扱った理論書を調査した。平成21年3月にニューヨーク市立大学院及び市立図書館にて資料調査及び研究者との意見交換を行い、同大学院英文科学会に参加し、建築と都市をテーマとしたパネルディスカッションのコメンテーターをつとめた。
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