2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本語声調史上における声点の受容のされ方と日本人のアクセント観についての研究
Project/Area Number |
06J10648
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石山 裕慈 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 日本語学 / 日本漢字音 / 声調 |
Research Abstract |
本研究は、文献資料において「声点」がどのような変遷をたどったか解明し、ひいては日本人のアクセント観も射程に入れることを目指しているが、これは日本語アクセント史全体に関わるテーマであり、ともすれば論点が拡散してしまうことも危惧されたことから、科研費受給中の研究内容としては、日本漢字音にひとまず的を絞ることとした。「声点」そのものが本来は漢字の声調を示す符号であったこと、および漢語と和語とでは、前者の研究の層が薄いことなどから、まず漢字音・漢語に付せられた声点について、そのあり方の研究を進める必要があると判断したことによる。今年度は中世の訓点資料における字音点に注目し、資料・加点者によりどのような差異が存するか、という観点から研究を行った。具体的成果としては、六地蔵寺本『文鏡秘府論』について、仮名音注の検討も併せ、『日本語学論集』第3号に研究成果を公表し、従来研究が行われてきた図書寮本とは異なった声調体系が反映している可能性を導き出した。『文鏡秘府論』とは、従来本による訓法の差が小さいとされてきた資料であるが、そのような資料であっても声調体系に違いが存することは意外であり、他の資料の場合でも、同様の現象が想定されるところである。翌年度以降の研究課題として、同じ資料について、加点者の位相(僧侶か博士家の学者か、どの系統に属しているか、など)が異なると声調体系や声点差声位置にどのような違いが表れるか、また資料の性質(漢籍か、仏典か、日本漢文か、など)によって事情が異なるか否か、そもそも字音の声点とは日常的な漢語のアクセントを反映したものであるのかどうかなど、多角的な視点からの考察が必要であるという見通しを得た。
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Research Products
(1 results)