2007 Fiscal Year Annual Research Report
日本語声調史上における声点の受容のされ方と日本人のアクセント観についての研究
Project/Area Number |
06J10648
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石山 裕慈 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 日本漢字音 / 声調 / 訓点資料 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、日本漢字音について、どのような声点が記入されているか、その背後にはどのような事情が存在するかの解明を目指した。今年度は漢音資料については『論語』『本朝文粋』の数種類の古写本を、呉音資料については貞享版『補忘記』を研究の対象とし、性質を異にするそれぞれの資料における声点のあり方について考察した。 まず『論語』と『本朝文粋』は、両者とも漢音資料として括ることが可能であるが、正格漢文と日本漢文という違いがあり、漢音声調についても性質に差が存することが予想された。複数の写本について調査を行った今年度の研究により、本文上の同じ箇所に記入された声点の差異が後者の方が多いこと、そこに現れた差異は日本語化に起因するものが少なくなく、従って日本漢音にあっても声調の日本語化が見られることなど明らかにした。このように、漢音読の訓点資料という点で共通していても、資料の性質により漢音声調の内実は様々であることが判明した。 次に『補忘記』については、論議の場において実際に用いられた抑揚は、声点で示された音調と密接な関係を有しており、記入者が以前指摘した呉音声調変化の延長線上にあるという結論を導き出した。このような呉音声調の変化は、かつては声点を変化させることによって対応していたものだが、補忘記では全体の抑揚を表示する符号(節博士)によって表示している。日本語のアクセント体系が変化したことにより、単字の字音声調の組み合わせという把握から漢語全体の抑揚へとアクセントの把握が変化したことなどが考えられるのであり、声点アクセントとの関係の変化という新たな検討課題が浮かび上がった。
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Research Products
(4 results)