2006 Fiscal Year Annual Research Report
相対論的数値コードを用いた非球対称爆発による超新星外層の加速の研究
Project/Area Number |
06J10689
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 航 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 超新星 / 元素合成 / 化学進化 / 相対論的流体力学 |
Research Abstract |
銀河ハローにある星の表面組成の観測から、非常に金属量の少ない星にも^6Liが存在し、9^BeとNの両方が過剰に存在する金属欠乏星があることが明らかになった。これらの観測事実は、銀河の化学進化の初期段階において6^Liと9^Beを生成する機構が働いていること、さらにそのプロセスでNが重要な働きをしていることを示唆している。そこで我々は、星周物質に覆われた星が超新星爆発を起こし、加速された星の外層が星周物質とぶっかるというシナリオを提案した。外層および星周物質にHeが含まれればHe+He反応によってLiが合成されるであろうし、Nが含まれれば破砕反応によって大量のBeが生成されることが期待できる。すでに得ている1次元の相対論的数値流体コードを用いて爆発の数値計算を行い、加速された粒子のエネルギー損失と軽元素合成をthick target近似によって計算した。爆発させる星のモデルとしては、SN 1998bwモデルの表面組成をHe/Nで置き換えたものを使用した。計算の結果、星表面に0.01-0.1太陽質量程度の薄いHe層が存在し、かつ質量比1%前後のNを含んでいる状態で超新星爆発を起こすと観測量をよく説明できることがわかった。さらにより現実的なモデルとしてHirschi 2006の計算結果を使って爆発のシミュレーションを行った。また、質量放出率の時間変化のデータをもとに星周物質の分布を出し、加速された外層がその中でエネルギーを失う過程をモンテ・カルロ法を用いて計算した。その結果、加速された粒子の大部分は星周物質のごく内側でエネルギーを失ってしまうこと、軽元素合成反応は星の近傍で完結してしまうことがわかった。したがって、合成される軽元素の量や比率は、星の外層および星周物質の内側の組成に強く依存することになる。このプロセスが銀河の化学進化の初期段階で働いているとすれば、金属欠乏星表面で観測される軽元素量には大きなばらっきがあることが期待される。
|
Research Products
(2 results)