2007 Fiscal Year Annual Research Report
初期宇宙における宇宙論的磁場と再電離時期の精密制限
Project/Area Number |
06J10713
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
山崎 大 National Astronomical Observatory of Japan, 理論研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 初期磁場 / 宇宙背景放射 |
Research Abstract |
宇宙背景放射(Cosmic Microwave Background、以下、CMB)温度偏光揺らぎは、小さいスケールにおいて観測と理論計算の矛盾が指摘されているが、宇宙論的な初期磁場(Primordial magnetic field:PMF)を考慮することでこの矛盾が解消できることが知られている。当研究では、先行研究の解析的な近似を数値計算に置き換えることにより精度を格段に向上させたプログラムを使用し、かつ、それまで考慮されていなかった磁場と密度場の相関関係を初めて取り入れ、宇宙論的スケールにおける密度場揺らぎぺのPMFの影響を精密に研究し、CMB温度偏光揺らぎに対するPMFの影響を考慮した理論計算と、複数の観測結果(WMAP, ACBAR, CBI, VSA, Boomerang)と比較した。その結果、PMFがnG程度存在した場合、銀河団スケール(1〜10Mpc)において、従来の効果では説明できなったCMBの温度揺らぎだけでなく偏光揺らぎにおいても揺らぎの理論と観測の矛盾を定量的に説明できることを初めて示した。同時に、将来のCMB温度・偏光揺らぎの観測計画や銀河の数密度分布の観測結果と、PMFを考慮したCMBや宇宙論的スケールの密度場進化を比較することにより、磁場のパラメータだけでなく、PMFの生成論に対しても制限を与えられることを見出した。先行研究(Gopal & Sethi, Phys. Rev. D72, 2005, 103003)において、nG程度のPMFが存在すると初期天体の形成時期を早める効果があると指摘されているが、この結果と私の結果を組み合わることによって、初期天体形成(再イオン化)時期が、PMFを考慮しない時に比べて早期になることを予想した。
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