2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J10762
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 絢子 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 火星 / クレーター / エジェクタ / リモートセンシング / 渦輪 / 流体実験 |
Research Abstract |
昨年度は,流体実験(1)とリモートセンシングデータ解析(2)を平行して行った. 1,渦輪と粒子層の相互作用中に観測される渦列群の形成過程を明らかにするために,前年度までの問題点を改良した新しい渦輪発生装置を作成した.その装置を使って,渦輪を発生させるピストンの並進速度・並進距離と,渦輪の並進速度・直径との関係などを調べた. 2,NASAやESAから配布されている火星の画像・高度データの解析を行った.火星のリモートセンシングデータ解析に関しては国内に適切な指導者がいないため,フランス・ミディピレネー天文台に3ヶ月間滞在し,火星の探査データを用いた研究を精力的に行っているD. Baratoux博士の指導のもと,火星クレーターのEjecta Mobilityとエジェクタの体積を測定した. Ejecta Mobilityとは,エジェクタ半径をクレーター半径で規格化した無次元数のことで,火星クレーターの形成過程で起こるエジェクタ流の流動化効率を表すパラメータの一つである.これまでの研究では,Ejecta Mobilityの大小は含まれている流体の量の大小のみに依存すると考えられていた.しかし我々の研究により,Ejecta Mobilityのクレーター直径依存性は,エジェクタ流の駆動エネルギー源やエネルギー消失過程の違いも大きく反映することがわかった.さらに,火星Utopia平原でEjecta Mobilityを測定した結果,エジェクタ流の駆動エネルギーは衝突エネルギーではなくエジェクタ自身のポテンシャルエネルギーである可能性が示唆された. また,火星クレーターの高度データからエジェクタの体積を求めるプログラムを開発した.このプログラムを使った予備的な解析では,いくつかのクレーターのエジェクタで,部分的に衝突前の地形より現在の地形の方が低くなっていることが観測された.この「負の厚さ」は,これまで注目されていなかった新しい観測量であり,エジェクタ流の性質・堆積過程を考察するうえで鍵となると考えられる.
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