2006 Fiscal Year Annual Research Report
軟体動物群に注目した前期白亜紀における北太平洋生物地理区形成過程の解明
Project/Area Number |
06J10778
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊庭 靖弘 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 白亜紀 / 生物物理 / 軟体動物 / ラチス区 / 北太平洋区 / 温暖化 / 分断 / 礁性生物群 |
Research Abstract |
本研究は白亜紀当時最大の海洋である北太平洋の軟体動物群集の時空変遷に注目し,生物地理変動を解明することを目的としている.平成18年度は白亜紀の海洋生物地理を考える上で最も重要な礁性生物群と二枚貝類(Neithea)から構成されるテチス型動物舞に注目し,北西太平洋(本州,北海道)と北東太平洋(カリフォルニア)で野外地質調査を展開し,この結果からテチス動物群の北太平洋での分布変動を解明した.このほか,次年度の研究に備えて上記地域から多量の化石標本を採集するとともに高知大学,九州大学,カリフォルニア科学アカデミーに保管されている化石標本の観察を行った. (1)ベリアシアン期〜アルビアン期までテチス型動物群は連続的に北太平洋に移入していることが明らかとなった.この連続的な移入と群集変化は,3200万年間北西太平洋がテチス生物地理区に属していたことを示している. (2)北太平洋域においてテチス型動物群は,1)アプチアン末期〜アルビアン最初期と,2)前期/中期アルビアン期境界付近,3)後期アルビアン期の3回の時期に段階的消滅していることが分かった.この段階的消滅は他地域では全く知られておらず,これは北太平洋区がテチス区から段階的に独立したことを示している. (3)アルビアン以降,礁性生物群の北西太平洋への再移入は前期始新世まで知られておらず前期始新世以降,現在まで断続的に移入している.北太平洋域でのアルビアン期〜前期始新世までの5000万年という極めて長い間にわたる礁性生物群の"不在"と固有種の繁栄の事実は,本研究で明ちかとなった白亜紀中期の礁性生物群の段階的消滅が示す分断イベントが極めて長い期間にわたり生物群集の進化過程に大きな影響を与えたことを示している.このような広域で,かつ長期にわたる海洋生物群の"分断イベント"は生命史上例がない. 以上の成果を,3編の論文として国際誌から出版した(別紙:学会誌への発表番号1・3),現在2編の論文が国際誌へ投稿準備中である.
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Research Products
(4 results)