2006 Fiscal Year Annual Research Report
性フェロモン成分比の制御機構とその進化に関する研究-アワノメイガ類を対象として-
Project/Area Number |
06J10858
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福澤 麻衣 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 性フェロモン / アワノメイガ属 / 生合成 / 不飽和化酵素 |
Research Abstract |
わずかに異なる性フェロモン成分を持つアズキノメイガ(Sca、性フェロモン;E/Z11-14:OAc)とアワノメイガ(Fur, E/Z12-14:Oac)のフェロモン生合成を比較するために、交雑を行ったところ、交雑第1世代のメス成虫は両親の性フェロモン成分と異なる成分(14:OAc)を大量に分泌した。14:OAcはアワノメイガ属のフェロモン成分としては報告されていない。遺伝的解析により、フェロモン抽出物が親型になるか、交雑第1世代型になるかは主に常染色体上の1遺伝子座によって制御されていることを明らかにした。この結果は、アワノメイガ属のフェロモン成分の進化がわずかな遺伝子の変異によって劇的に生じたことを示唆する興味深い結果で、第21回国際化学生態学会で発表し、現在、Journal of Chemical Ecologyに投稿中である。 さらに、フェロモン成分の制御には合成に関与する不飽和化酵素の作用を阻害する因子の存在が考えられた。ScaとFurではともに、Δ11位、Δ14位不飽和化酵素の遺伝子が発現しているが、一方の酵素の産物のみが性フェロモン成分に利用されている。そこで、Scaのフェロモン腺から得られたΔ11位不飽和化酵素遺伝子を用いて、組み換えタンパク質を作成、それを抗原にして抗血清を得ることに成功した。この抗血清を用いた免疫組織化学では、Scaのフェロモン腺で強いシグナルを得たが、非常に相同性の高いΔ11位不飽和化酵素遺伝子の発現が知られている近縁種のFurではシグナルが得られなかった。この結果は。Scaで翻訳されているΔ11位不飽和化酵素が、Furではまったく翻訳されないか、ごくわずかしか翻訳されないことを示唆している。今後は、逆にFurのフェロモン生合成に関与するΔ14位不飽和化酵素について抗血清を作成し、Δ11位不飽和化酵素の結果と比較・検討する必要がある。
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