2006 Fiscal Year Annual Research Report
タマネギバエの耐寒性機構の解明-chaperoninの関与を中心に-
Project/Area Number |
06J10873
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
粥川 琢巳 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 耐寒性 / COT / タマネギバエ / アクチン / depolymerization / Latrunculin B / トリパンブルー / real-time PCR |
Research Abstract |
タマネギバエ(Delia antiqua)を用いてCCT(chaperonin containing the TCP-1)が耐寒性獲得に関与していることを明らかにするため以下の実験を行った. 1.CCTを構成する全サブユニットのmRNA発現量を調査 CCTを構成するαサブユニット以外の7つのサブユニット(β〜θ)をクローニングし,real-timePCRによって耐寒性に伴う発現量の動向を調査した.その結果,耐寒性の増加に伴い全サブユニットのmRNA発現量が同調して増加していた. 2.低温におけるアクチンの構造観察 低温処理後,CCTの基質であるアクチンの構造を蛍光観察したところ,耐寒性の低い個体ではアクチンのdepolymerizationが観察された.また同時にトリパンブルー染色により細胞の生死判別を行った結果,低温により生じたアクチンのdepolymerizationの後に細胞膜が損傷を受けることが観察された. 3.アクチン重合阻害剤を用いた耐寒性試験 アクチンのdepolymerizationの後に細胞膜の崩壊が起こることから,低温条件下でアクチンが細胞膜を保護することが示唆された.そこで幼虫期にアクチンの重合阻害剤であるLatrunculin B(LatB)を摂食させた蛹を用いて耐寒性試験を行った.その結果LatBを摂食した蛹において有意に耐寒性の低下が観察された. 以上の結果から,耐寒性の高い蛹ではCCTが細胞内に多く存在するためアクチンの増強,もしくは低温によってdepolymerizationが生じても迅速にアクチンの再重合を誘発し,その結果アクチンが細胞膜を保護することで耐寒性を獲得していることが示唆された.
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