Research Abstract |
本年度は,まず,既往研究の男女共同参画とエンパワーメントの概念および分析方法を整理し,本研究での分析方法を検討した。とくに,農業経営における女性のエンパワーメントの実態について解明することを目的とし,関連する研究会や女性農業者の全国組織に出席し,事例収集や最新の議論の情報収集を行った。ここで,全国で初めて女性農業者自らが認定農業者制度の夫婦連名を提案し,家族経営協定の普及・推進に実績のある,熊本県を調査対象地として選定した。農業経営におけるエンパワーメント(経営における意思決定)の調査方法を明確化し,農村女性起業としても,農業経営者としても注目される農家女性の経営調査を実施した。そして,当該地域での女性経営者の存立可能性を検討するため,地域農業の展開や農家構造について統計データの分析と,農協や普及センターなどの関連機関への聞き取り調査を行い,農家調査を実施した。4事例の比較分析から,以下の点が指摘できる。1.複合化の程度の低い順に,女性の意思決定の関与は,労務管理→生産管理→部門分担という特徴がみられたこと。2.女性が部門を持つには,女性自身の情報的資源の蓄積が重要となっていたが,現状では,とくに生産管理や戦略的な意思決定への対応力が不足していたこと。3.既存のトマト経営が安定する下では,複合化の方向には向かわないため,女性の経営参画は規模拡大にともなう雇用拡大に対応した,雇用者の管理にとどまると示唆されることである。 以上の研究結果は,日本農業経済学会において,「複合経営における夫婦間の部門分担-大規模施設園芸を対象として-」として口頭報告を行い,報告論文を投稿した。 また,あわせて,熊本県の市町村別の男女共同参画指標に係るデータ(家族経営協定締結数,認定農業者の共同申請・女性単独申請件数),農山漁村パートナーシップ推進状況調査資料などを収集し,現在分析を行っている。
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