2007 Fiscal Year Annual Research Report
モンスーンアジア稲作地帯における水利組織の持続性に関する研究
Project/Area Number |
06J10927
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 幸夫 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教
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Keywords | イラク / ティグリスユーフラテス川 / 越境水資源問題 / GIS / RS / 水収支 / 蒸発散 / 灌漑用水 |
Research Abstract |
1.モンスーンアジア水利組織に関する研究 昨年度より調査対象地としているタイ国サラブリ県ケンコイバンモ地区の現地調査を引き続き実施した。調査の結果、当該地域における水利組織の新設が住民間のコミュニケーションを活性化させ、農業技術の伝搬や農協的役割を持つ組織の設立など、ソーシャルキャピタルの蓄積を誘発していたことが明らかになった。このような農業水利組織設立の副産物とも言える波及効果は水利組織そのものの持続性にも正のフィードバックを持つものであり、今後の地域計画においても積極的に配慮されていくことが期待される。 2.国際河川における水資源配分に関する研究 昨年度より引き続きティグリス・ユーフラテス川流域における国家間協調的水利用実現のための水文分析ならびに国際政治分析に取り組んだ。水文分析においては、イラク全体に関する水収支を分析することで広域レベルの蒸発散量を推定することに成功した。当該地域における蒸発散量は灌瀧農業実施のプロキシデータと見なすことができる。また、こうして得られた推定蒸発散量と衛星リモートセンシング画像より得られた植生データならびに統計より得られた食料生産データとの比較を行った。これにより過剰な水供給はイラクの食料生産最適化には負の効果をもたらすという新たな定量的知見が得られた。これらの分析結果が実際の国際政治交渉においていかなる役割を持ちうるかを評価するためにトルコ政府関係者への聞き取り調査を行った。その結果、ティグリス・ユーフラテス川の国際河川問題の扱い方についてはトルコ政府内でも統一的見解がないという実情が浮き彫りとなった。本分析は今後も引き続き実施していく予定である。
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Research Products
(2 results)