2006 Fiscal Year Annual Research Report
金融商品のプライシングモデルの開発及びその実証研究
Project/Area Number |
06J10954
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池田 亮一 東京大学, 大学院経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 株式市場 / バリュー株効果 / 信用リスク / 株式リターン / アノマリー |
Research Abstract |
平成18年度前半はクレジットリスクの新たな評価モデルに関する論文を執筆し、学会で発表するための作業に費やされた。モデルは債券の償還猶予を考慮した世界的にも例のないものであることに加え、我が国の債務返済の実態を反映したものとしてより現実的なモデルであるということで学会では好評を得た。 その後、テーマを株式市場におけるアノマリー現象に移し、日本・アメリカでの実証研究とそれらについての理論モデルの研究という二つの側面からのリサーチを行った。 理論面では、長くアノマリーと認識されていたバリュー株効果を説明することができる理論として1990年代末に提示されたものに注目した。この理論は、動学的なリアルオプション理論と言うべきもので、企業価値は既存の資産がもたらすキャッシュフローの期待現在価値と、将来の投資環境に応じて投資判断できる権利というオプション価値で成立していると考えるものである。簿価に対して時価が大きいバリュー株は後者のオプション価値の占める割合が大きい企業として差別化される。 一方実証面では、株式リターンプレミアムとデフォルトリスクの関係について興味深い事例が見つかった。通常の金融理論では、デフォルトリスクが高ければ投資家はその分高い株式リターンプレミアムを要求するが、実際の米国株式市場を対象にした実証研究で示されているのはその逆で、デフォルトリスクが高いほど事後的な株式リターンの平均値は低くなっている。さらに、この現象はバリュー株式でより強く現れることが示されている。 これらのリサーチから、動学的リアルオプション理論によって株式リターンプレミアムとデフォルトリスクの関係を説明できるのではないかと考え、動学的リアルオプション理論に新たに債券を導入したモデルを構築し研究している。
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