2006 Fiscal Year Annual Research Report
指紋を中心とする身元確認技術の歴史の総合的研究-「登録される身体」の誕生
Project/Area Number |
06J10989
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 一径 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 身体論 / 表象文化論 / アイデンティティ / 19世紀フランス / 医学史 / 写真史 / 犯罪学 / 指紋 |
Research Abstract |
指紋を用いた身元確認システムの成立を、身体とアイデンティティの関係の変容として思想史的に捉えなおす本研究は、主として時系列的な以下の3つの段階にわたって繰り広げられる。1.十九世紀フランスにおける出生証明の医学化。2.十九世紀末における科学的な身元確認技術の成立。3.身体的アイデンティティの現代的な展開。 それぞれの段階の本年度における研究実施状況は以下のとおりである。1.フランス国立図書館などに収蔵されている、十九世紀フランスの医学雑誌を中心とする文献調査を通じて、出生証明という制度が徐々に医学の問題へと回収されていく流れを確認した。2.十九世紀末から二十世紀初頭の犯罪人類学の文献を読み解きながら、ベルティヨン・システムや指紋のような身元確認システムの成立が、犯罪捜査の現場における一般人からの証言の忌避と表裏一体をなしていることを明らかにした。モルグ(死体公示所)の廃止(1906年)という例に焦点を当てつつ、この成果を雑誌論文の形で発表した。3.現代のアイデンティティをめぐる問題を、身体的アイデンティティと主観的アイデンティティの拮抗として浮かび上がらせることを目指し、「モンタージュ写真」という例に着目して、その歴史を総合的に考察した。学問的な研究のまったくなされていないこの技術の、ベルティヨンによる「口述ポートレート」に由来する来歴を明らかにした上で、科学捜査において忌み嫌われてきた「証言」が、1950年代における「モンタージュ写真」の出現によって、捜査の現場に回帰したことの意味を考察し、学会発表において現時点の成果を報告した。
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Research Products
(1 results)