2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J11020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 潤一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 安全保障 / アナーキー / 干渉 / 国際システム / 階層性 / 主権 / 同盟 / アメリカ |
Research Abstract |
国際関係における秩序原理は従来、「無政府状態(Anarchy)」であることが自明視され、国際関係にも国内政治と同様の「階層性(Hierarchy)」が発生し得る可能性については必ずしも注目されて来なかった。これは、国際関係における階層性が、帝国や際限のない拡張主義国の存在の様に他の国家の主権(又は領域的統一性)を脅かす行動と同一視され、無政府状態という国際秩序の基本的特徴を脅かすものと見なされてきたからである。ところが、こうした「無政府状態」の自明視とは裏腹に、国際関係には過去も現在も様々な形で国家間の不平等性が存在してきた。それらは、例えば帝国とその保護国、(政治的な)大国と小国、旧宗主国と旧植民地国、先進国と途上国等の形を採るが、全ての事例において共通するのは、同じ「主権」国家と言っても、ある国家の主権は国内の権威構造に対する外部からの干渉を全て排除可能であるという点において完全なものであり、またある国家の主権はそれが不可能であるという点において不完全なものであるという事実である。階層的な国際関係においては、ある主体は「指導する権限を持ち(entitled to command)」、ある主体は「服従することを要請される(required to obey)」という関係にあるのである(Waltz 1979,p.88)。階層性の研究は、一般的には19世紀の西欧列強とその他の地域の国家との関係や、先進諸国と第三世界の諸国間の関係等を念頭において行われることが多かったが、本研究ではこの議論を20世紀後半及び冷戦後の世界にも拡張することを目的とする。具体的には、第二次大戦以後のアメリカの同盟関係を念頭において、従来外的脅威を対象に行われる均衡化行動によって無政府状態を復元すると捉えられてきた「同盟」の次元においても、国際関係で階層性が生じうることを明らかにする。
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