2007 Fiscal Year Annual Research Report
成体嗅球における神経細胞死のダイナミクスとその生理機能
Project/Area Number |
06J11056
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大澤 志津江 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経細胞死 / カスパーゼ / 嗅神経細胞 / 神経発生 / 嗅覚系 |
Research Abstract |
システインプロテアーゼであるカスパーゼは細胞の生死を決定する上で中心的な役割を果たすとともに、細胞の増殖や分化、細胞移動といった、多岐に渡る生命現象に関わることが明らかとなった。しかしながらこれまでのところ、細胞ごとにカスパーゼ活性の強さやパターンを調節し、下流イベントを決定する機構は明らかではない。特にマウスでは、カスパーゼ3やカスパーゼ9、あるいはその活性化因子、Apaf-1を欠損させると、系統によっては脳が肥大化することから、カスパーゼは神経系の形態形成に必須であると考えられてきたが、実際に「いつ」「どこで」カスパーゼが活性化し、細胞死を誘導するのか、また細胞死以外の現象にも関与しているか、その詳細な生理機能は不明である。 研究代表者は前年度までに、「神経系の中でも特に嗅神経細胞において、カスパーゼが強く活性化することを見いだした。カスパーゼの活性化した細胞のうちの約半数が死につつある細胞であり、残りの半数は、細胞死に特徴的な核の変化の起きていない細胞であった。そこで、カスパーゼの生理機能を詳細に解析するにあたり、カスパーゼ9あるいは、Apaf-1を欠損したマウスと、特定の嗅覚受容体(OR)遺伝子座にOR-IRES-tau-lacZ変異を導入したマウスを交配することにより、特定ORを発現する嗅神経細胞を可視化する系を確立した。その結果、カスパーゼ9、あるいはApaf-1欠損マウスでは、嗅神経細胞の軸索走行や分化およびシナプス形成に異常を来していることが明らかとなった。マウス神経系発生過程においてカスパrゼの生理機能を詳細に解析し、新たな生理機能を示唆した初めての事例であると言える。
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Research Products
(2 results)