2007 Fiscal Year Annual Research Report
難治性アミロイドーシスの新規治療法開発を指向した精密有機合成化学の実践的な展開
Project/Area Number |
06J11072
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
倉持 哲義 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リレンザ / インフルエンザ / [2+3]-環化反応 |
Research Abstract |
インフルエンザは、トリインフルエンザのパンデミックなどが危惧される中、現在、その研究が切に望まれている分野である。抗インフルエンザ薬に対する研究は、危険視されている大流行に伴い、医薬品の備蓄という問題と密接に関係している。 本年度、私は交付申請書に掲げた「医薬品に直結する有機合成化学の展開」として、抗インフルエンザ薬=リレンザの効率的な合成法の開発に着手した。従来法では、高度に官能基化されたシアル酸を原料に用いる必要があり、より単純な原料からリレンザを合成するルートの開発には意義があると考えられた。またその合成ルートの確立に当たっては、糖母核に由来した新規な方法論の開発も視野に入れることとした。 リレンザを合成するには、ManNAc由来の炭素6ユニットと、ピルビン酸に由来する炭素3ユニットを結合する必要がある。当初は、生合成経路に基づいてマンニッヒ反応を用いることでこの結合を行おうと試みたが、既往の研究例からも推察されたとおり収率に難点を残し、この方法論によるリレンザの合成は困難だと考えられた。 そこで従来にない結合方法論を開発する目的で、N-グリコシドをニトロン等価体に用いた[2+3]-環化反応の開発に成功し、これを利用してリレンザがもつ炭素9個の骨格を効率的に構築することができた。過去の知見を調べてみても、N-グリコシドを原料に[2+3]-環化反応を検討した例はほとんど知られておらず、基礎的な原料および高度に官能基化された原料で体系的に検討した初めての例である。 本方法論をリレンザの合成に適用するには、収率の問題は克服しているものの、立体選択性に改善の余地を残している。本プロジェクトにおいて選択性の問題点を解決することは、類似の基礎的な[2+3]-環化反応においても立体選択性を制御する指針を与えうるものだと考えている。
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