2006 Fiscal Year Annual Research Report
コリン特異的グリセロホスホジエステル-ホスホジエステラーゼNPP6の生理機能解析
Project/Area Number |
06J11082
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂上 秀樹 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | コリン / ホスホジエステラーゼ / オリゴデンドロサイト / グリセロホスホコリン |
Research Abstract |
グリセロホスホコリン(GPC)はグリセロール骨格のα位にリン酸基を介しコリンが結合した化合物であり、生体内において細胞内、細胞外に広く存在している。GPCは細胞内の浸透圧調整物質(オスモライト)として機能していることが知られているが、細胞外のGPCについてはその機能は不明である。以前当研究室においてNucleotide Pyrophosphatase Rhosphodiesterase(NPP)familyに属する新規分子NPP6がコリン特異的ボスホジエステラーゼとして同定された。NPP6は細胞外に活性部位を持つエクト型の酵素であり、GPCに対し高い親和性を示したことからNPP6は生体内でGPCの代謝を介し何らかの機能を発揮している可能性が示唆された。 今回、NPP6が中枢神経系においてミエリン形成細胞オリゴデンドロサイトに特異的に発現しており、新規分化マーカーとなることを見いだした。NPP6はオリゴデンドロサイトが前駆細胞から分化していくのに伴い発現し始める。この時期はオリゴデンドロサイトが細胞膜を伸展させる時期にあり、ホスファチジルコリン(PC)、スフィンゴミエリン(SM)などのリン脂質の合成に大量のコリンが必要とされる。実際コリン関連遺伝子はこの時期に発現が上昇した。肝臓以外の細胞はコリンをほとんど合成できないため、細胞外の遊離コリンを、コリントランスポーターを介し取り込んでいる。コリンは遊離コリンとしてだけでなく、PC、SM、リゾボスファチジルコリン、GPC、ホスホコリンなどの形で生体内に存在するが、これらのコリン前駆体が細胞に利用されるためには、遊離コリンまで代謝される必要がある。しかし、コリン前駆体の代謝経路ならびに代謝酵素の実態は未解明であった。本研究によって、NPP6を介した細胞外のGPCの機能として、脳内におけるコリン源としての新たな可能性が示唆された。今後NPP6の研究を通じオリゴデンドロサイトにおけるGPCの重要性が明らかになるとともに、脳内のGPCの機能が解明されていくものと期待される。
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