2006 Fiscal Year Annual Research Report
シュレーディンガー方程式による特異性の伝播について
Project/Area Number |
06J11105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 健一 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シュレーディンガー方程式 / 特異性の伝播 / 波面集合 / 散乱計量 / 変数係数 |
Research Abstract |
前年度に行った斉次波面集合に関連して,計量が非捕捉的でない場合の特異性の伝播,および,調和振動子ポテンシャルに対する時間推進作用素のトレースについて研究を行った.また,シュレーディンガー方程式における平滑化作用の表現の一つである変数係数Strichartz評価式ついても研究した. ・計量が非捕捉的な場合 特に古典軌道が閉軌道をひとつ持つ場合を考えた.斉次波面集合の方法を適用する場合,コンパクト台を持つ適当な相空間上の関数を,対応する古典軌道の流れを用いて引き戻す必要がある.非捕捉的でないときは,捕捉的な場合と異なり,台が時間無限大においても有界名領域に残るため,用いる擬微分作用素のクラスが悪くなり,これまでの方法を直接適用できないことが分かった.台をより精密に評価するためにFourier積分作用素による時間推進作用素の表示を用いる方法を調べている.また,条件を弱めることも検討中である. ・調和振動子ポテンシャルを持つ場合 このとき時間推進作用素のトレースが周期的に特異点を持つことが知られている.この証明にはsc波面集合が用いられる.前年度に,sc波面集合と斉次波面集合の本質的な同値性が得られ,Wunschの結果の仮定を弱めることに成功したが,この場合にも同様にして,斉次波面集合の方法を用いて条件を弱めることを試みた.斉次波面集合ではsc波面集合と異なり,空間方向の減衰がうまく捕らえられない.また古典軌道の高エネルギー極限も自由粒子に比べて扱いが複雑になる.現在も研究中である. ・変数係数Strichartz評価式 計量が遠方で漸近的に平坦であるとき,Strichartz評価が時間局所的に成り立つことが知られている.時間大局的な場合への拡張を試みた.スケーリングと半古典極限の議論を合わせた方法を試したが,うまくいかなかった.Fourier積分作用素による方法が適用できるか調べている.
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