2007 Fiscal Year Annual Research Report
「人と自然のかかわり」をめぐる規範性の研究-自然再生事業を例に-
Project/Area Number |
06J11132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
富田 涼都 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 環境倫理 / 自然再生事業 / 霞ヶ浦 / 人と自然のかかわり / 順応的管理 / アザメの瀬 / 市民参加 / 合意形成 |
Research Abstract |
本研究では、文献調査や茨城県霞ケ浦の2箇所の自然再生事業と、佐賀県松浦川のアザメの瀬の自然再生事業の調査を行い、前年度に明らかにした、自然再生事業が人と自然のかかわりの再生を行っていくためのプロセスの規範的な枠組みについて比較検討を行った。 具体的には、アザメの瀬での自然再生事業の成功は、合意形成において、同じ語彙を使いつつ、取り組みの推進という点においては一致していても、専門家や行政とアザメの会を中心とする地元住民の間でニュアンスの違う「再生への論理」が並存しており、かつ、それらの論理が公論形成の場や、共通の身体的経験によって相互変容してきた状況が、不確実性を抱え、常に「失敗」する可能性を抱えた取り組みにおいて重要であることを、他の霞ケ浦の2例との比較で明らかにした。また、それが、社会的にも意味のある人と自然のかかわりの再生につながることも示した。 こうした、適切な「順応的管理」を行っていくための社会的な基盤として、社会的な順応的管理によって、不確実な未来を抱えざるを得ない状況下でも、自然再生事業が人と自然のかかわりの再生をするプロセス自体を担保できることを明らかにした。また、ローカルな知のネットワークの構築によって、事業のメタ・モニタリングに必要な事業の思考系の外側から視点を提供し、その構築を参加型で行うことで言葉だけでなく、身体でもって個人と個人、集団と集団を結ぶことで信頼できる人間関係をつくり、不確定な未来への合意や、営みを制御するために必要な「未来への視野」を人と自然のかかわりのあり方に盛り込むための基盤となることを明らかにした。 これらのことから環境倫理が、ほんとうに規範的な枠組みとしなければならないのは、現場のひとびとが具体的な「保全」の対象を選び、不確実な未来へと「ひとと自然のかかわり」のあり方を再生していけるようなプロセスであることを明らかにした。
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Research Products
(4 results)