2006 Fiscal Year Annual Research Report
「国府石器群」の拡散現象に着目した日本列島後期旧石器時代社会の変動過程の研究
Project/Area Number |
06J11136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森先 一貴 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国府石器群 / 国府系石器群 / 角錐状石器 / 広域展開 / 社会間関係 / 伝播 / デザイン / 石材運用戦略 |
Research Abstract |
本研究では後期旧石器時代後半期初頭に瀬戸内地方に現れる「国府石器群」、およびこれと強い関係を有する「国府系石器群」を研究対象とする。国府石器群と異なり、国府系石器群は最終氷期最寒冷期には本州〜九州島として一体的に陸化していた地域に広く出現するため、その広域展開の背景を探ることは、当該期の地域社会間の交渉関係を探る上で極めて重要な研究テーマとなる。 18年度は、広域的な編年の樹立により、国府系石器群が広域出現した時期・空間的範囲を厳密に再検討することを目指した。九州と関東の資料実見調査を主におこない、以前に調査していた東海地方の実見調査も補足的に実施しつつ、型式学的分析を重視しながら従来の西南日本の編年案を再検討、再構築することを試みてきた。またこの比較材料として、韓半島および中国東北地方の資料調査・現状把握も並行した。 結果、本年度は特に国府系石器群と密接に関連し、同じく後期旧石器時代前半期から後半期にかけての移行期に広域展開する角錐状石器と呼ばれる石器の動態を明らかにし得た。角錐状石器が広域展開したのは、この時期の各地域社会集団の生態適応戦略の一体的変化を背景とする。すなわち、後期旧石器時代前半期に進展してきた特定少数資源に特化した広域移動戦略は、これを支えるための特定良質石材を利用した入念な石材運用戦略を進化させたが、同後半期にはより多数種の資源の計画的開発へと資源開発戦略が転換するため、資源の種類や時機に応じて幅広い石材種を利用して製作可能な、適応幅の広い石器デザインが求められていた。角錐状石器は製作上の制約が非常に少ないため、その情報が社会間を伝播し、この時期に広い範囲で主要な道具(槍先・加工具)として採用されたとみられる。 以上の成果は、類似した背景を有して展開する国府系石器群の動態解明の貴重な手掛かりであり、次年度へ研究を繋ぐものである。
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Research Products
(5 results)