2007 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本における建築家の有名性の生産・流通・消費に関する研究
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06J11183
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
南後 由和 The University of Tokyo, 大学院・学際情報学府, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 建築家 / 有名性 / 芸術界 / 作者性 / クライアント / 建築ジャーナリズム / 文化・芸術社会学 / 都市・空間論 |
Research Abstract |
本年度は、1.建築界と有名性の形成に関する基礎理論的研究、2.戦後日本における建築家とクライアントの結びつきに関する研究、3.建築家や建築専門誌の編集者へ建築家の社会的位置に関する聞き取り調査を進めた。具体的な研究成果は、以下の3点である。 (1)『ソシオロゴス』では、建築家の有名性と建築界が互いに独立して存在するのではなく、両者が循環関係のもとに動態的に形成される様を論じた。有名性に関する先行研究では、マスメディア上の表象を重視しすぎるあまり、各文化領域間の差異が見失われる傾向にあった。また建築家の有名性は、芸術家の作者性と密接な関係を持つ。そこで、有名人のなかにおける芸術家の特異性を擁したうえで、H.S.べッカーの「芸術界」の概念を援用することによって、建築界という空間的枠組みが、建築家の規範や評価基準を内包していることや、図としての有名性のみに着目することによって見えなくなっていた、有名性をめぐる集合的営為を明らかにした。また、それが芸術/技術、建築家/建築士などの境界のねじれを内包している点、集団制作やクライアントとの関係において他律的である点などに特徴があることを示した。 (2)日本都市学会の口頭発表では、文化・芸術社会学と都市・空間論を交差させた、建築の社会的生産という視角を提示したうえで、丹下健三、磯崎新、黒川紀章を事例に、クライアントの変遷を年代別、地域別に考察した。 (3)『M×M2007-建築家が語る「都市への処方」』では、菊竹清訓や槇文彦などの建築家に、都市と建築の関係をめぐってインタビューをした。また、未発表であるが、1950年代の『新建築』の編集者であった川添登、平良敬一、宮内嘉久に、戦後建築ジャーナリズムに関する聞き取り調査を重点的に行った。
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Research Products
(5 results)