2006 Fiscal Year Annual Research Report
ラット嗅皮質の覚醒状態依存的ゲーティングとアセチルコリンの役割
Project/Area Number |
06J11220
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津野 祐輔 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 嗅球 / 嗅皮質 / 電気生理 / 樹状突起間双方向性シナプス / 誘発電場電位 / 覚醒 / 睡眠 |
Research Abstract |
嗅皮質の実験に入る前に、まず嗅球において覚醒状態依存的変化について調べた。ウレタン麻酔下ラットを用いて、皮質脳波により脳の状態をモニターした。そして、嗅球樹状突起間の双方向性シナプスにおける興奮性入力と抑制性入力の変化を、嗅球投射ニューロンである僧帽細胞の軸索の束のLOT(lateral olfactory tract)を刺激する事で調べた。その結果、僧帽細胞から顆粒細胞への興奮性入力は、覚醒状態依存的変化が見られなかった。それに対して、顯粒細胞から僧帽細胞への抑制性入力は、覚醒状態が低いと考えられるSlow-wavestate時に、強くまた長くなることが、新たに見出された。また振動局所電場電位(oscillatory local field potential)を記録したところ、Slow-wave state時に周波数が低くなっていた。この現象は、slow-wave state時に顆粒細胞から僧帽細胞への抑制性入力が長くなる事と、関連がある可能性がある。これらは、嗅球における覚醒状態依存的な情報処理モードの切り替えについての重要な知見である。得られた結果を日本神経科学大会および北米神経科学大会において発表した。現在論文を作成中である。さらに、自由行動下(awake)ラットからの誘発電場電位(evoked field potential)記録の系を立ち上げることに成功した。そして、自由行動下ラットにおいても、覚醒状態が低い徐波睡眠時に、顯粒細胞から僧帽細胞への抑制性入力が強くなるという結果が得られつつある。これは、ウレタン麻酔下で見られた現象が、確かに自由行動下でも見られることを示しており、非常に画期的成果である。以上のように、覚醒状態依存的な情報処理モードの切り替えが、嗅球も含めた脳全体で起こっていることを示唆するデータを得つつある。
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