2007 Fiscal Year Annual Research Report
ラット嗅皮質の覚醒状態依存的ゲーティングとアセチルコリンの役割
Project/Area Number |
06J11220
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津野 祐輔 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 嗅球 / 嗅皮質 / 電気生理 / 樹状突起間双方向性シナプス / 誘発電場電位 / 覚醒 / 睡眠 / アセチルコリン |
Research Abstract |
前年度の研究では、ウレタン麻酔下ラット嗅球において、覚醒状態が低いと考えられるslow-wave state時には、抑制性ニューロンである顆粒細胞から投射ニューロンである僧帽細胞への抑制性入力が、強くまた長くなっている事を示した。また、自由行動下ラットにおいても、覚醒状態が低い徐波睡眠時に、顆粒細胞から僧帽細胞への抑制性入力が強くなる傾向が見られた。この研究結果を受けて本年度はまず、自由行動下ラットにおける抑制性入力の変化を、覚醒状態をより細かく分類し、詳細に観察した。また、ウレタン麻酔下ラット嗅球の僧帽細胞の細胞内記録(intracellular recording)を行い、抑制性入力(IPSP)の大きさと長さが、覚醒状態依存的に変化することを明らかにした。この事により、覚醒状態依存的に、IPSPの大きさと長さが変化している直接的証拠が得られた。以上の結果を日本神経科学大会において口頭発表した。そして、この覚醒状態依存的変化がどのようなメカニズムで制御されているかを調べるため、灌流システムを用いて嗅球上に薬物を投与する事で薬理学的に調べた。その結果、NMDAレセプタおよびGABA(A)レセプタが、顆粒細胞から僧帽細胞への抑制を仲介していることを直接的に示すことに成功した。この結果も含めて、北米神経科学大会(Society for Neuroscience)においてポスター発表した。さらに、ムスカリン性アセチルコリンレセプタにより、顆粒細胞から僧帽細胞への抑制の覚醒状態依存的変化が制御されていることを、新たに見出しつつある。これらの結果について、論文を作成中である。このように、覚醒状態依存的な情報処理モードの切り替えが、嗅球も含めた脳全体で起こっており、その中でもアセチルコリン入力が重要な役割を担っていることを示唆する、画期的な結果が得られつつある。
|
Research Products
(4 results)