2008 Fiscal Year Annual Research Report
MEGを用いたヒト聴皮質における音色認知過程の神経メカニズムの研究
Project/Area Number |
06J11222
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水落 智美 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 脳磁図 / 聴覚 / 音声 |
Research Abstract |
音色の知覚、すなわち音源の脳内表象を復号化し「聞こえた音が何の音であるか」を知覚するためには、聞こえた音と脳内で予測された音とのマッチング機構が必要だと推測される。母国語に含まれる母音に対し、潜時150ms頃に左半球に存在する記憶痕跡との逸脱を反映したマッチングが行われるという報告がある。しかし、聴覚系は音声だけではなく、自然界に存在する様々な音へも対応しなければならず、非音声に対しても音声と類似した処理機構の存在が推測される、そこで、視覚刺激として2種類の長さの竹及び金属でできた筒を木槌で叩いているように見える仮現運動画像を、聴覚刺激としてそれぞれの筒を実際に叩いた音を用いた視聴覚課題を提示した時の脳磁場を計測した。被験者は画像と音刺激が一致しているかをボタン押しで判断した。 各条件(AV一致、FO不一致、材質不一致、FO・材質不一致)ごとに加算平均した波形のうち潜時50-200msにおけるRMS値に対し解析を行った結果、潜時51-55msでは条件間のばらつきと右半球の有意に大きい反応が認められ、右半球のMT野、後頭頂葉で行われる一番初期の視聴覚における相互作用が反映されている可能性が考えられる。N1mピーク前後である潜時81-114msでは右半球の有意に大きい反応が認められ、非音声に対するN1m反応の右半球優位性が示されていると考えられる。また、潜時140-150msではFO・材質不一致条件がAV一致条件より有意に大きい反応が認められ、刺激間の逸脱を反映していると考えられる。 以上より、非音声に対しても音声と同様なマッチング機構が存在し、潜時150ms頃の脳活動にその処理が反映されていることが示唆された。この脳活動には先行する音の感覚記憶・短期記憶・作業記憶と聴覚刺激との逸脱、視覚刺激によって生成された聴覚イメージと聴覚刺激との逸脱などが反映されている可能性が考えられる。
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Research Products
(4 results)