2008 Fiscal Year Annual Research Report
細胞接着因子プロセシングによるシナプス可塑性制御機構と記憶の分子メカニズム
Project/Area Number |
06J11223
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
海津 正賢 The University of Tokyo, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | プロテアーゼ / 細胞接着因子 / X線結晶解析 / 生化学 / 構造生物学 / シナプス可塑性 |
Research Abstract |
本研究計画では、細胞接着因子カドヘリンのプロテアーゼによるプロセシングに着目して、記憶の分子基盤と考えられているシナプス可塑性の分子機構を、X線結晶構造解析及び生理的な条件で解明することを目指している。昨年度までに、海馬スライスを用いて、組織中の細胞接着因子N-カドヘリン断片の検出のための生化学的解析の条件検討を行った後、シナプス応答の変化に伴う細胞内カドヘリンの切断量の変化を生化学的な検討をしたが、いずれもこれまで培養細胞等で報告されているような細胞内切断産物の増加については確認できなかった。上記の切断メカニズムにおいては、膜貫通型プロテアーゼのADAM10が神経活動依存的に細胞外でN-カドヘリンを切断に寄与することが報告されているが、その原子レベルでのメカニズムは不明である。上記分子機構の理解のためには、ADAM10の詳細な原子レベルでの解析、及びその構造変化に着目することが重要であると判断し、本年度より、蛋白質X線結晶構造解析を用いて、ADAM10/N-カドヘリンの複合体形成によるプロセシング機構の検討を開始した。複合体形成による結晶化に先立ち、まずADAM10蛋白質単独での構造解析に着手した。マウス脳由来cDNAより、ADAM10の活性部位をクローニング後、Hisタグ融合蛋白質として、大腸菌での発現検討を行ったところ、発現蛋白質は菌体内で封入体として存在していることが確認された。そこで、封入体の可溶化および、蛋白質構造巻き戻しの条件検討を行ったところ、ADAM10蛋白質を構造巻き戻し後可溶化画分に回収することには成功したが、それらの蛋白質は溶液中で非常に不安定のため、更なる精製は非常に困難であった。そこで、より正しくフォールディングされた蛋白質の精製を目的とし、バキュロウイルスを用いた発現系の検討を行っている。
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