2006 Fiscal Year Annual Research Report
海馬CA3領域特異的NMDA受容体欠損マウスでの痙攣発作亢進の原因解明
Project/Area Number |
06J11247
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福島 章顕 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | NMDA受容体 / 海馬 / CA3 / リカレントネットワーク / 同期発火 |
Research Abstract |
申請者は痙攣発作の誘発閾値が低下しているCA3領域特異的NMDAR欠損マウスを用い、CA3領域での神経活動がどのように変化しているのかを解析した。 ウレタン麻酔下において変異体マウスのCA3領域のlocal field potentialを計測したところ、従来には報告されていない振幅の大きく、かつdurationの短い特徴的なパターンが変異体マウスにおいてのみ検出され、我々はこの活動をEEG spikeと呼ぶことにした。 電流源密度解析の結果、海馬の歯状回→CA3→CA1という神経ネットワークの中において、EEG spikeがCA3領域で初めて生じ、投射先であるCA1へと伝播することが明らかになった。 さらに、EEG spikeは多数のCA3錐体細胞の活動電位を反映するmultiple unit activityと強く相関することが明らかになった。以上の結果は変異体マウスのCA3錐体細胞の興奮性が亢進し同期発火が生じやすくなったことを示唆している。 てんかん発作は神経細胞の過剰な同期発火で生じること、また、てんかんの患者は発作が起きていないときでも脳波上でSpike様の神経活動(interictal activity)がみとめられることから、変異体マウスでのみ見つかるEEG spikeは痙攣発作閾値低下の神経基盤だと考えられた。さらに、NMDA受容体がシナプスにおける神経可塑性だけでなく、神経活動の同期発火を抑制することでネットワークの興奮性も制御しうるという新たな知見が得られた。
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