2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J11258
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
魚返 拓利 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 造血幹細胞 / WAVEファミリー分子 / Rac / HSPCs |
Research Abstract |
造血幹細胞の機能は骨髄内でCXCR4、c-Kit、インテグリンを含む統合されたシグナルによりコントロールされているわけだが、これらのシグナルの下流で機能する分子にWAVEファミリー分子があり、Racの下流で葉状仮足形成に必要不可欠な因子であることが知られている。WAVEファミリー分子の上流に位置するRac1とRac2は造血細胞系列に発現しているが、hematopoietic stem and/or progenitor cells:Lineage^-/c-kit^+/Sea-1^+cells(HSPCs)においてはその機能は区別されている。本研究では骨髄、脾臓、胸腺由来の血球細胞におけるWAVEファミリー分子の発現解析を行った。また、WAVE2ホモノックアウトマウスは胎生致死で骨髄からCD34^-KSL細胞を分離することが不可能なため、WTマウスにおいてRNAiの手法を用いてCD34^-KSL細胞に強<発現しているWAVE2をノックダウンさせた。 本研究によって造血幹細胞においてRNAi法を用い、WAVE2をノックダウンすることにより造血幹細胞の骨髄移植後の生着能力が著しく阻害されていた。これはWAVE2の上流にあるRac1欠損HSPCsの表現型と類似していることがあきらかになった。さらにWAVE2をノックダウンしても造血幹細胞におけるホーミング後の骨髄内での増殖がコントロールと比較して著しく阻害されていることがあきらかになった。 WAVE2ノックダウンをした後、形成されたcobblestone areaを計数した結果、興味深いことにWAVE2ノックダウンをすることで形成されるcobblestone areaの数はコントロールと比較して有意に減少していることが明らかとなった。このことからWAVE2ノックダウンによって造血幹細胞の機能低下、つまりストローマ細胞の下にもぐりこむ能力やもぐりこんだ後の増殖能力に障害が引き起こされることが示唆された。メチルセルロースや液体培地での培養条件では血球細胞の増殖能力は正常であったことから、ここにみられる造血幹細胞の機能低下はストローマ細胞依存性であることが考えられる。次にphalloidin stainingで細胞膜表面に集積するF-アクチンを染色した。あらかじめスライドガラスにpoly-L-lysineとBSAをコーティング、つまり細胞外刺激がない条件ではWAVE2をノックダウンしてもアクチン重合の阻害は観察されなかった。しかし、BSAではなくfibronectinをコーティングし、細胞外刺激が存在する条件ではWAVE2ノックダウンによりアクチン重合の阻害が観察された。このことはRac欠損HSPCsで観察されたアクチン重合障害と表現型が一致する。よって、造血幹細胞においてもWAVE2がRac1の本質的な下流にあることがほぼ証明されたと考える
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