2008 Fiscal Year Annual Research Report
ナノメートルスケール金属ワイヤにおける変形過程と非平衡電気伝導の第一原理計算
Project/Area Number |
06J11272
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
品岡 寛 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 乱れ / 電子相関 / 一粒子励起密度 / ソフトハバードギャップ |
Research Abstract |
乱れと電子相関が共に存在する場合の電子状態は物性物理における未解明の大きな問題の1つである。平成20年度において、有限次元で乱れが強い状況を取り扱える非制限ハートリー・フォック法を用いて、乱れと電子相関が共に存在する3次元アンダーソン・ハバード模型の基底状態を求めた。その結果、絶縁相全域において、フェルミエネルギー付近の局在準位が排除され、フェルミエネルギー上でのみ(一粒子)励起状態密度が0となるソフトギャップ構造を発見した。平成21年度は、さらに研究を進め、この新奇ソフトギャップ、「ソフトハバードギャップ」のメカニズムを解明した。 本申請研究で解析したアンダーソン・ハバード模型は、短距離相互作用と乱れを含む最小模型の1つである。具体的には、まず3次元において、ハートリー・フォッグ近似の範囲内で基底状態の相図を求め、絶縁相全域(反強磁性絶縁相、常磁性絶縁相)においてソフトギャップが存在することを明らかにした。ソフトギャップとは、フェルミエネルギー上でのみ状態密度が0となるギャップ構造である。従来、EfrosとShklovskiiによって、長距離クーロンカが存在する場合には、アンダーソン絶縁相においてもフェルミエネルギー上で状態密度が有限にとどまることは許されず、ソフトギャップ(ソフトクーロンギャップ)が存在することが知られていた。しかし、アンダーソン・ハバード模型には、短距離相互作用しかなく、従来の理論では説明できない。そのため、3次元における数値計算の結果は、従来知られていないソフトギャップ形成のメカニズムの存在を示唆している。また、1次元、2次元においても、ハートリー・フォッグ近似の範囲内で、非従来型のソフトギャップ(ソフトハバードギャップ)が存在することを明らかにした。さらに、一次元において厳密対角化に基づく計算を行い、ソフトハバードギャップがハートリー・フォッグ近似を超えても形成されることを明らかにした。 ソフトハバードギャップの起源を明らかにするため、乱れのために基底状態が多くの励起状態と縮退していることを仮定し(多谷型エネルギー構造)、ソフトハバードギャップの形成を説明する現象理論を構築した。実際、現象論から予測される状態密度のエネルギーに対するスケーリング則が、数値的な計算結果と定性的かつ定量的に一致することを示した。ここまでの研究結果をまとめたレター論文はPhysical Review Letters誌に掲載され、実験(電気伝導度、光電子分光、SrRul-xTixO3)を含めた本論投稿中である。
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Research Products
(11 results)