2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナノメートルスケール金属ワイヤにおける変形過程と非平衡電気伝導の第一原理計算
Project/Area Number |
06J11272
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
品岡 寛 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非平衡電気伝導 / 第一原理計算 / 遷移金属 / 固有チャネル分解 |
Research Abstract |
平成18年度における研究実績は、1.固有チャネル解析の非平衡グリーン関数に基づく定式化、2.固有チャネル解析によるナノメートルスケールd軌道金属ワイヤにおける電気伝導現象の解析の2つである。前者(1)では、固有チャネル解析と呼ばれる解析手法の非平衡グリーン関数に基づく定式化を行った。固有チャネル解析とは、量子ポイントコンタクトにおける電流や電子密度などの物理量を互いに独立な固有チャネルの寄与に分離することができる解析手法であり、近年単原子コンタクトや原子ワイヤの局在基底を用いた第一原理計算に広く用いられている。私の手法では、直接非平衡グリーン関数を固有チャネルの寄与に分解することで、非平衡グリーン関数で記述された任意の物理量を分解することができる。特に局所電流分布の表式を導き、2番の研究において使用し有用性を確かめた。後者(2)では、新しい固有チャネル解析の有用性を確認し、また理論による先行研究がほとんど存在しない、遷移金属からなるナノメートルスケールd軌道金属ワイヤにおける電気伝導現象を解明すべく、密度汎関数理論と非平衡グリーン関数に基づいた有限電圧下の第一原理計算を行った。計算の結果、s軌道系では見られないd軌道系に特有な2つの現象、1.長いワイヤにおける、ワイヤと電極の界面での強い散乱に起因した、非常に強い電圧-電流特性の非線型性、2.ワイヤ長を短くしていくことで、非線型性が弱まり電流値が一桁近く増大する伝導現象のクロスオーバー現象を見出した。クロスオーバーは、電極からワイヤ内へ減衰しながら侵入するエバネッセント波が、短いワイヤにおいて伝導に寄与することが原因であり、エバネッセント波の侵入長が長くその寄与も大きなd軌道系特有の現象である。以上の2つの実績は日本物理学会において発表し、また現在Physical Review B誌に投稿中である。
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