2007 Fiscal Year Annual Research Report
ナノメートルスケール金属ワイヤにおける変形過程と非平衡電気伝導の第一原理計算
Project/Area Number |
06J11272
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
品岡 寛 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非平衡電気伝導 / 第一原理計算 / 遷移金属 / 固有チャネル分解 |
Research Abstract |
(1)ナノメートルスケール金属ワイヤの電気伝導現象 1年目で行った研究では、電極から金属ワイヤ内へ減衰しながら侵入するエバネッセント波が存在し、s軌道と比べd軌道を通した、伝導において強調されることが明らかになった。2年目では、その軌道依存性の原因を調べた。その結果、d軌道はs軌道に比べて空間的に局在していることが原因であることが分かった。軌道が局在していると、金属ワイヤ内の一次元バンドの幅が狭く、フェルミエネルギー上に存在するバンドの数が少ない。したがって、金属ワイヤ内の波動関数と電極内の波動関数を接続するためには、一次元バンドのみでは自由度が少なく、電極との界面付近のワイヤ内で局在するエバネッセント波がより多く必要である。また、エバネッセント波の空間分布をみるため、「固有チャネル」毎に電流分布を分解する方法を確立し、ナノメートルスケール金属ワイヤに適用した。私はこれらの結果を1年目で投稿した論文の内容とまとめ、Physical Review Bへ再投稿するための作業を現在行っているところである。また、これらの内容は2008年3月に開催されたアメリカ物理学会で発表された。 (2)乱れと電子相関の共存効果 乱れと電子相関が共に存在する場合の電子状態は物性物理における未解明の大きな問題の1つである。しかし、弱局在からの摂動展開では乱れによる局在が強い場合が扱えない。また、動的平均場近似や有効媒質近似では、空間相関が取り込めない。そのため、私は、有限次元で乱れが強い状況を取り扱える非制限ハートリー・フォック法を用いて、アンダーソン・ハバード模型の基底状態を求めた。アンダーソン・ハバード模型とは、ハバード模型にランダムなポテンシャルを加えたものである。ポテンシャルはガウス分布に従うものを用いた。ハーフ/フィリングの条件下では、反強磁性絶縁相、反強磁性金属相、常磁性金属相、常磁性(アンダーソン)絶縁相が現れることが分かった。ここで、反強磁性転移点は、反強磁性長距離秩序変数を計算し臨界指数1/2を仮定することで求めた。また、金属・絶縁体転移点は、フェルミエネルギー付近の1電子軌道から局在長を計算し、システムサイズでバルク外挿することで求めた。各相でのスペクトル関数の計算を行ったところ、長距離秩序の有無に関わらず絶縁相全域においてフェルミエネルギー上でスペクトル関数の値が0になり、その周りで幕的な構造が現れることが分かった。これは、従来の弱局在の理論や無限次元の理論にはない新しい現象である。私はメカニズムを解明し、2008年3,月に開催された日本物理学会で発表した。
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Research Products
(6 results)