2006 Fiscal Year Annual Research Report
正三角格子構造を持つ有機導体の、スピンフラストレーション及び低温電子物性の研究
Project/Area Number |
06J11274
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒崎 洋輔 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機導体 / スピンフラストレーション / キャリアドーピング / 核磁気共鳴 / バンド幅制御 |
Research Abstract |
核磁気共鳴は、核スピンと電子スピンの超微細結合を通して電子状態を探る手法である。本研究の対象物質であるκ-(BEDT-TTF)_4Hg_<3-δ>X_8(X=Cl, Br)は、まだ核磁気共鳴があまり行われておらず、これらの物質の超微細結合の詳細を調べることは電子物性を定量的かつ定性的に探る上で不可欠である。そこで本年度においては、本研究の対象物質のシフトテンソルの値を定量的に求めることを目標とした。 具体的には試料を回転機構のついたプローブにセットし、磁場に対して様々な配置における核磁気共鳴のスペクトルを測定した。得られたスペクトルの角度変化を詳細に調べることによってシフトテンソルを決定しようと試みたが、スペクトルが煩雑な形で現れ、解析が非常に困難であることが判明した。表題物質のXがClでもBrでもスペクトルが煩雑な形となったため、これは実効的にドープされたキャリアの影響など特殊な事情が働いていると考えられ、今尚解析中である。 また本研究の対象物質は、圧力を印加すると、超伝導相が再び現れたり、高温での金属相が非フェルミ流体的な振る舞いからフェルミ流体的な振る舞いへと変化していくことが確認されたりなど、20〜30kbarといった超高圧下において非常に興味深い現象がみつかり始めている。そこで本研究ではこの超高圧下で核磁気共鳴を行うことも目的の一つとしている。しかし、通常の市販の圧力セルでは耐圧が足りず、またこれまで電気抵抗用に使われていたセルでは磁性を持つ部品が使われているなど、核磁気共鳴に使用できる超高圧用圧力セルが必要となる。そこで非磁性であると言われているアルミの焼結体をピストン部分に用いた特殊な二重構造型圧力セルを注文した。新たに用いた部品の磁性を検証した上で、この特殊な圧力セルを用いて超高圧下における電子状態、特に特に磁性に関しての情報を核磁気共鳴によって探求していく予定である。
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