2007 Fiscal Year Annual Research Report
正三角格子構造を持つ有機導体の、スピンフラストレーション及び低温電子物性の研究
Project/Area Number |
06J11274
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒崎 洋輔 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 物性実験 / モット転移 / バンド幅制御 / 核磁気共鳴 |
Research Abstract |
本研究の対象物質であるκ-(BEDT-TTF)_2Xは、圧力によって比較的楽に物性を制御できる強相関電子系の物質群である。特に、モット絶縁体を基点とすることで、キャリアドーピングに加えて圧力やフラストレーションといった様々なパラメータによって広がるモット物理の一端を垣間見れる。そこで本年度においては、以下の三つを主なテーマとして研究を行った。 1)κ-(BEDT-TTF)_4Hg_<3-8>X_8(X=C1,Br)は、有機導体としては例外的にドーピングが施されており、常圧において異常な反強磁性揺らぎが検出されている。そこで本年度では2重構造型圧力セルを用い、8kbarまでの静水圧下で8Tの磁場の下13C-NMR測定を行った。その結果、常圧で検出された異常な反強磁性揺らぎや不均一は8kbarで抑えられ、マクロな相分離を示唆する複数の緩和が得られた。 2)κ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]Clは、常圧では反強磁性モット絶縁体であり、2次元モット転移を研究する上で良いモデル物質である。そこでヘリウムガス圧装置を用い、特に絶縁相を中心として、7.4Tの磁場の下で13C-NMR測定を行った。結果として、ネール温度以上で発現する反強磁性の短距離相関や反強磁性相における反強磁性モーメントなどがモット転移近傍においても保たれる、ということが明らかになった。 3)κ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3は、常圧ではモット絶縁体であるが、正三角格子構造による強いスピンフラストレーションによりモット転移近傍に至るまでスピン液体相が実現している。このスピン液体から金属へのモット転移は実験的にも理論的にも手つかずの課題である。そこでヘリウムガス圧装置を用い、金属相に至るまで、7.4Tの磁場の下で13C-NMR測定を行っている。
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Research Products
(3 results)