2008 Fiscal Year Annual Research Report
モット転移系における電荷・軌道ダイナミクスの解明とその応用
Project/Area Number |
06J11275
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤岡 淳 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 軌道秩序 / 金属絶縁体転移 / ペロブスカイト型V酸化物 / 光学伝導度 / コランダム型Ti酸化物 / スピンシングレット |
Research Abstract |
ペロブスカイド型V酸化物は軌道格子相互作用、スピン軌道相互作用および軌道交換相互作用が同程度のエネルギースケールになり、低温で多様な磁気・軌道秩序相が出現する。YVO3は異なる2種類のスピン・軌道秩序相が競合している状態にあり、温度変化によって異なる磁気・軌道秩序相転移が生じる。近年、我々はこの系ではバンドフィリングを制御することによっても磁気・軌道秩序相転移を誘起できることを明らかにした。 そこで本研究では、光学伝導度、ラマンスペクトルを測定し、類似のホールドープ系であるLa1-xSrxVO3と結果を比較する事でホールドーピングに伴った電荷・軌道ダイナミクスを明らかにすることを目的として研究を行った。その結果、ドープされたホールは局所的な格子歪みを伴い、これは1電子バンド幅の減少と共に顕著になることが明らかとなった。また、ドーピングによって生じたC型磁気秩序・G型軌道秩序相においてば低温でG型磁気秩序・C型軌道秩序の短距離相関が存在している事を明らかにした。 また、t2g軌道自由度が物性に重要な役割を担っている系の代表例として、コランダム構造を持つTi2O3に着目した。この系は450K以上では金属的性質を示すが、それより低温では絶縁体となる。また、Tiイオンを部分的にVイオンに置換する事で系にホールをドープする事が出来、ドーピングによる絶縁体金属転移を誘起する事が出来る。そこで我々は、本年度この系における絶縁体金属転移に注目し、輸送特性、光学伝導度スペクトル等の測定によって電荷ダイナミクスを明らかにする事を目的とした。その結果、キャリアドーピングによって金属化した領域においても光学伝導度スペクトルにバンド間遷移の擬ギャップ構造が残り、コランダム構造に特徴的なジンクレッド状態が強固に残っていることを明らかにした。
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Research Products
(4 results)