2008 Fiscal Year Annual Research Report
有機半導体の電気伝導機構の解明と新機能デバイスの創製
Project/Area Number |
06J11298
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 孝理 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 有機半導体 / 有機薄膜トランジスタ / ペンタセン / 移動度 / 真空蒸着 / 結晶成長 |
Research Abstract |
本研究はペンタセン薄膜トランジスタ(TFT)の特性、特に移動度を向上させることを目的とし、その方法を薄膜の結晶成長という最も基礎から検討した。 本研究の独創性は有機薄膜の成長方法としてこれまで通常用いられてきた真空蒸着法ではなく、ガスを導入した低真空度の雰囲気下で成長させるという方法を用いた点にある。昨年度は、窒素、酸素、水素中で蒸着を行い、水素中で蒸着した場合にのみ移動度が2倍に向上することを発見した。更にこの薄膜の第一層目の粒径を原子間力顕微鏡により観察した結果、粒径が2倍となっていることを確認し、これが移動度の向上に寄与していることも示した。この結果は、従来の基板温度や蒸着レートといったパラメータに加え、"蒸着中の雰囲気"も結晶成長の制御パラメータとなりえることを示した初めてのものであった。 本年度は蒸着中の水素による粒径増大及び移動度向上のメカニズムを議論した。具体的にはペンタセンの粒密度のガス雰囲気(水素、重水素、ヘリウム、窒素)依存性、及び温度依存性を調べた。その結果、粒径の増大はガスの還元性でも表面拡散エネルギー変化でもないことが明らかとなった。本研究では更にこの機構の説明とし、ガス分子がエンブリオを解離させるというモデルを提案し、それが実験をよく説明することも示した。以上の知見を基に、次に水素中の蒸着を従来の移動度向上の有効な手法であったoctadecyltrichlorosilane(OTS)による化学的基板表面処理と組み合わせることを検討した。その結果、OTS上でも水素中で蒸着することにより移動度が向上することが確認され、移動度は最高で5.0cm2A/Vsとなった。これはこれまでOTS上に作製したペンタセンTFTにおいて最高の値であることより、本研究の蒸着方法はペンタセンTFTの特性を向上させる方法として極めて有用であることを示している。
|
Research Products
(4 results)