2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本近世における宗教的物語の状況と神観・霊魂観の変遷
Project/Area Number |
06J11329
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井関 大介 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 上田秋成 / 神道 / 近世 / 宗教史 / 思想史 |
Research Abstract |
平成18年度は計画通り、これまでの自分の研究蓄積を新たな文脈に位置づけなおし、近世宗教史についての見通しを立体的に広げる作業を中心に研究をすすめた。 9月17日の日本宗教学会での発表では、神道思想史に関する近年の視点を踏まえ、そこに上田秋成ら近世中期文人の言説を関係づけた。それは神道思想史という縦の文脈における秋成らの位置づけを探る作業であると同時に、従来は縦の関係として捉えられてきた本居宣長や平田篤胤を、横の関係において捉えなおす作業でもある。 11月1日の東アジア恠異学会での発表では、「カミ」をめぐる言説の変遷を、不完全ではあるが古代から近世に到る大まかな流れとして概観し、出版文化と知識人ネットワークいう新たな環境を得た近世中期文人達の言説の、宗教史的重要性について論じた。この発表を通して得られた見通しが、研究課題の遂行に向けて具体的作業を積み重ねて上での、ひとまずの指針になると思われる。 『東京大学宗教学年報』に掲載された論文では、秋成が「カミ」をめぐる物語をどう受容し、どのような様式によって語り換えたかという観点から、その言説を整理した。ここで得られた成果は、「カミ」の物語をめぐる言説のジャンル分化という、研究課題中の重要な論点に関する一つの事例研究として、今後も活用していく予定である。 『モノ学・感覚価値研究第1号』に掲載された論文は、従来もっぱら文学作品として論じられてきた秋成の『雨月物語』を、当時の宗教史的背景から読み解く試みである。作中の一編「吉備津の釜」を、M・バフチンやT・トドロフ等の文学批評的な手法を応用して分析している。もとより物語論を軸とした文学史と宗教史との架橋は本研究課題の視野にあったが、近世中期に出現した「カミ」をめぐる新たな言説の一つとして、近世文学史上の画期的作品とされる『雨月物語』をも位置付けたことによって、その可能性を示すことができた。
|
Research Products
(2 results)