2007 Fiscal Year Annual Research Report
日本近世における宗教的物語の状況と神観・霊魂観の変遷
Project/Area Number |
06J11329
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井関 大介 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近世史 / 宗教史 / 三教論 / 上田秋成 / 懐徳堂 / 思想史 |
Research Abstract |
理論面においては、これまで活用していた文学理論や宗教学理論に加え、ミシエル・ド・セルト-の宗教史研究や神秘主義研究の読書会において新た方法論を学び、言語論的転回以後の諸理論と従来の実証的な歴史学的研究との接続の仕方を身につけることができた。一方、國學院大学大学院生との宗教史に関する自主ゼミナールにおいては、実証主義的な歴史学的宗教史研究の方法や問題意義を共有することに留意した。そのような活動を通して國學院大学の神道史研究者とのつながりを深めることにより、十二月にはロンドン大学のSchool of Oriental and Afrikan Studies と 國學院大学との大学院生により合同研究発表会に招かれ、日本側の代表者の一人として研究発表を行っている。そこでは、これまでにまとめた上田秋成に関する研究を、中世から近代にいたる宗教史の大きな流れの中における近世の特徴(出版文化と識字率の上昇による宗教識の拡散等)、およびその近世という時代における文人的知識人の意識という観点からまとめ直した。また、近世文人の随筆雑著の類に多く目を通すことによって、従来の諸分野による研究ではとりこぼされてきた不定形の宗教意識、あるいは宗教批判意識の所在を確認し、近世の神霊観の全体像を描くという研究課題を全うするために必要である宗教史的な時代精神の把握に努めた。それを論証するための資料も着々と集まりつつあり、九月の日本宗教学会大会における発表「江戸中期文人の三教論」もそういった成果を踏まえてのものである。すなわち、上田秋成の宗教観を同時代の啓蒙的宗教者の言説との比較から検討することにより、従来の研究では進歩的な相対主義的知識人として懐徳堂の儒者達との共通点を強調されることの多かった秋成の宗教観が、実は反近代的な要素を多く含んでいることやむしろ宗教者のそれに近いことを明らかにし、近世宗教思想史の新たな問題領域の存在を示すことができた。
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Research Products
(1 results)