2006 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀半ばから戦間期にかけてのアメリカ合衆国プロテスタントの比較宗教学的探求
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06J11330
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 清子 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アメリカ合衆国 / キリスト教 / 宗教学 / 宗教史 / s |
Research Abstract |
本研究はアメリカ合衆国に対する宗教、特にプロテスタンティズムの影響を歴史的に探求しようとしたものである。特に19世紀後半から20世紀初頭にかけて、世俗的価値規範が力を増しつつあった時代のキリスト教の社会的活動への関わりに焦点を当てている。 本年度は、ディーコネスと呼ばれた女性たちに注目することで、キリスト教社会改革運動の草の根的な発展に対する研究を深めた。キリスト教徒による「社会的」な活動は、明確に「宗教的」な動機に支えられることによって開始されていたこと、その視覚は隣人愛という極めて狭いものであったことを読み取ることができるが、同時に、こうした活動はアメリカ合衆国全体の革新主義の流れの中に位置していることも明らかである。 宗教学的に述べれば、これは世俗的な用語と価値観によって支配されるようになるアメリカ合衆国社会の転換点にあって、宗教の実践者たちが巧みに自らの宗教を時代に即したものに組み替えて行った過程とみなすこともできる。 なお、女性の運動に注目したことにより、女性と男性という、19世紀にあっては現在以上に、截然と分かたれた社会的集団に対して、宗教が持った意義と役割の差異を、きわめて明確に浮き彫りにすることができた。 アメリカ合衆国の枠組み内の宗教を問うのが本研究の目的ではあるが、人間社会や集団は国家の境界を越えて活動するという認識は、近年のアメリカ研究ではますます重視されている。本年度は、実践者自身が国家という枠組みをあまり意識しない・ローカルな運動に着目したが、このローカル性が他の地理的概念的広がりを持ったより大きな文脈にどのように位置づけられていくのかと言う点が、今後の課題となるだろう。その中では特に教会対国家の衝突という、ヨーロッパにおける長い歴史を持った問題を、教会と国家の分離によって一応のところ解決した合衆国の性格が必然的に重要性を帯びるだろう。
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Research Products
(1 results)