2007 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀半ばから戦間期にかけてのアメリカ合衆国プロテスタントの比較宗教学的探究
Project/Area Number |
06J11330
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 清子 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アメリカ合衆国 / 宗教史 / 万国宗教会議 / 宗教間対話 / 世俗化 |
Research Abstract |
本年度は19世紀後半のアメリカ合衆国の宗教状況を、多宗教の並存という視点から理解することに努めた。そのため、研究対象をそれまでのプロテスタントから合衆国の他の宗教集団に広げ、主流のアメリカ文化べの適応、もしくは軋轢に目を向けることになった。研究の焦点として選択したのは、1893年、シカゴ万博に付随して開催された万国宗教会議である。この会議は欧米の宗教指導者のみならず、いわゆるアジアの宗教者を招聘し、アメリカ合衆国における多宗教状況が一層の広がりを示した画期的事件として取り上げられる。また会議は合衆国のプロテスタント指導者を中心に開催されたが、カトリック教徒やユダヤ教徒も包含された。多様な宗教集団が近代のもたらす変化への対応に苦慮していたこの時代に、世界の宗教者を集め、宗教間の協調をうち出した万国宗教会議はいかなる意味を持ったのだろうか。会議が一過性の影響力しか持たなかったことはしばしば指摘されるが、大会記録から見出されるのは、プロテスタントの指導者たちの予定した宗教間の調和とキリスト教の優越性の主張よりもむしろ、多様な宗教伝統固有の論理やアイデンティティの根強さであった。とりわけそれは万国宗教会議と前後して開催された、各宗教、宗派ごとの会議と対照させたときにより一層明らかになる。「宗教一般」を語ることと、「個別の宗教」について語ることは両立不可能ではないが、そこには常に齟齬や緊張が孕まれた、なお、宗教間の協力は、その「社会的」な活動、すなわち神学や儀礼と関わらない、人類の福祉への貢献において実現されるという期待は会議においてもしばしば示されていた。しかしその場合には「宗教」と「人道主義」との境界が曖昧になり、宗教自体の存立基盤が脅かされかねない。近代「世俗」社会における宗教の役割という現代にまで通じる問題は、この時代に既に投げかけられていたのである。
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Research Products
(3 results)