2007 Fiscal Year Annual Research Report
ウラジーミル・ナボコフにおける翻訳・バイリンガリズムの諸問題
Project/Area Number |
06J11334
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋草 俊一郎 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1) (70734896)
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Keywords | 翻訳 / バイリンガリズム |
Research Abstract |
本年度は、ナボコフの自作翻訳を綿密に対照して、研究を行った。文化間でのコンテクストの違いによる必然的なズレを目の当たりにしたとき、作者=訳者であるナボコフがいかにふるまったのかを考察したが、その際、一般的な翻訳から離れ、広義の意味でのアダプテーションの問題について研究した。文化的なコンテクストの違いは、作家の好みにまで反映されることを「ナボコフのドストエフスキー嫌い」という論考で示した。また、昨年の成果も踏まえて、論文を数点国内外の複数の学会に投稿し、そのうち数本がパブリッシュされた。その中には、アメリカの学会誌に掲載された英語論文も一点含まれる。秋にはロシア文学会の研究発表会にて学会報告を行い、オーディエンスからさまざまな意見をたまわり、知見を深めることができた。京都大学で行われている『アーダ』読書会に数回参加させていただき、研究者との交流を深めた。博士論文にも本格的に着手して、その七割を完成し、本年度中に完成させるめどをつけた。また、直接的なナボコフ研究ではないが、同時代のアメリカやドイツにおけるロシア系移民作家についての論考を発表した。彼らは現地に同化し、現地語で作品を執筆しているが、以前の世代の亡命者たちとの相違が今後、ナボコフや現代におけるバイリンガリズムの問題を考える上でも興味深い素材になることは間違いないと思われる。全体的に、翻訳やバイリンガリズムについて広く考える上での素地を築けた一年だった。
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Research Products
(6 results)