2006 Fiscal Year Annual Research Report
政治体としてのイギリス海軍:イギリス海軍の太平洋・極東防衛政策1880〜1914
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06J11346
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢吹 啓 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イギリス / 海軍史 / 軍事史 / 外交史 / 日英関係 / 日英同盟 / 帝国防衛 / 極東・太平洋 |
Research Abstract |
今年度は、幅広い文献蒐集を通してのイギリス海軍史の研究動向把握と、日英両国の史料館における史料収集に基づく実証研究を進めることを目指した。平成18年度中に十分な成果発表ができたとは言えないが、来年度の早い段階で研究成果を形にしたい。 まず、イギリス外交史、海軍史の研究動向を整理する中で浮き彫りになることは、J.T.SumidaとN.A.Lambertが先鞭を付けた修正主義的潮流の影響力の大きさである。かつての海軍史研究は外交史研究の枠組みを借り、海軍史料をその枠組みのもとで分析してきたが、両者の研究はより海軍史料に内在的に分析を進め、従来の英独関係・帝国防衛・海軍政策等に関する通説を根本から覆した。近年では両者の研究をさらに展開させ、また批判する研究者が登場しており、彼らの議論を整理することでイギリス海軍史・外交史の研究動向を客観的に理解することが可能である。以上の研究動向整理の成果は、有斐閣出版の『イギリス外交史』新刊紹介と、昨年四月に刊行された『ロイヤル・ネイヴィーとパクス・ブリタニカ』の書評執筆に一部反映された(書評は未刊行)。さらに、軍事史・外交史の研究動向と絡めたイギリス海軍史の研究動向論文を準備している。 次に、イギリス各地の史料館で調査研究・史料収集を行った。イギリス海軍の極東・太平洋防衛政策を考える上で、日露戦争前後の対日支援は重要な事例である。今回の渡英では、日露戦争直前にイタリアで建造していたアルゼンチン巡洋艦の日本政府による購入・回航を巡る事実関係を再構成し、イギリス海軍の対日支援の度合いを分析するための史料が得られたことが大きな成果である。以上の成果は発表するに至っていないが、平成19年度には研究会での報告を経て、論文として雑誌に投稿する予定である。
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Research Products
(1 results)