2006 Fiscal Year Annual Research Report
土器と赤色顔料から見た先史社会の研究.〜縄文時代晩期から弥生時代を中心に〜
Project/Area Number |
06J11347
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
根岸 洋 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 縄文晩期〜弥生時代 / 赤色顔料 / 民族考古学 / パプア・ニューギニアの考古学 |
Research Abstract |
平成18年度に行った研究実績は以下((1)〜(3))の3種に分けることができるが、具体的業績としてあげられたのは(1)・(3)の項目についてであり、(2)は鋭意継続中である。平成19・20年度に継続的研究を行い、具体的成果があげられることが期待されるものである。 (1)縄文晩期・弥生土器研究の深化 東北地方の弥生中期〜後期の型式学的研究を行い、その成果の一部を論文発表・口頭発表することができた。また土器研究を生かした形で地方史に関する著書(共著)を執筆することができた。縄文晩期の土器については資料収集並びに見学を終え、次年度に論文の形で発表していく用意がある。 (2)赤色顔料の調査研究 北海道〜東北地方に分布する旧石器〜弥生時代の遺跡のうち、赤色顔料に関するもののリストアップを行い、そのデータベースを作成した。そのうち後期旧石器時代・縄文時代に帰属する遺跡で代表例となる遺跡の出土顔料を資料見学し、一部について蛍光X線による分析調査を行った。青森県江豚沢遺跡・秋田県向様田A遺跡の発掘調査に参加し、出土顔料の原産地を探る試みを継続中である。特に向様田A遺跡については秋田県教委の協力を得て、具体的な産地特定にいたる見通しを持っている。 (3)民族考古学的調査 パプア・ニューギニア共和国ミルンベイ州における民族考古学的調査に参加し、土器製作についての調査を行い、その成果の一部を論文発表した。赤色顔料利用の観察ができる地域には平成19年度に調査に入るが、現在は顔料を用いない土器製作伝統をもつこの地域が、紀元後500年前後までは赤色顔料伝統を持っていた可能性が資料調査で判明しつつある。どのようなプロセスをもってそうした伝統をなくすに至ったのかが重要な課題として浮かびあがってきており、パプア・ニューギニア自体の考古学的調査にも積極的に参加していく必要がある。
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