Research Abstract |
本研究は,視覚における対象認知過程のメカニズムを探ることを目的とした.具体的には,対象認知過程における視覚的注意の役割に注目し,その特性を調べた.その結果,以下の3つのことが明らかにされた. まず,課題を効率的に遂行するために,視覚システムが課題に対して注意をどのように設定しているのかを調べた.実験では,高速逐次視覚呈示課題を用いて,試行開始から標的呈示までの時間間隔や刺激数などの様々な変数を操作した.その結果,標的呈示前に,課題関連刺激が一定期間(約600ms)もしくは一定数(約6個)呈示されることで,被験者の標的正答率は上昇した.したがって,視覚システムは課題関連刺激を入力することで,課題に対して注意を設定していることがわかった.この成果はPsychological Research誌に発表した. 次に,課題に対して設定された注意は,課題関連刺激の様々な次元に対して設定されていることがわかった.この実験では,単語を刺激として呈示し,注意が課題関連刺激の課題関連次元(e.g.,単語の色)だけでなく,課題非関連次元(e.g.,単語の意味)に対しても設定されていることが示された.この成果に関する一連の研究は,国内外の学会で発表し,The Japanese Journal of Psychonomic Science誌に掲載された.最後に,非注意による見落とし課題を用いて,視野内に呈示されているが被験者の気づいていない刺激に対しては,注意が設定されないことを示した.この結果は,視覚システムが課題に対して注意を設定するためには,被験者の気づき(awareness)を伴う必要があることを示唆している.この成果はVisual Cognition誌に発表した.
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