2006 Fiscal Year Annual Research Report
高密度天体で現れる特異な形状の原子核の性質とその宇宙物理学への影響の研究
Project/Area Number |
06J11385
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
園田 英貴 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 原子核パスタ / 非球状原子核 / 超新星爆発 / ニュートリノの透過率 |
Research Abstract |
超新星爆発の初期段階である重い星のコアの重力崩壊の過程において、そのコアには非球状原子核(パスタ相)が現れる可能性が高いことが過去から示唆されてきた。本年度は、超新星爆発に繋がる重力崩壊の過程でコアにパスタ相が現れることにより、超新星爆発にどのような影響があるかという問題に関して、ニュートリノの透過率への影響を特に取り上げて研究をおこなった。得られた知見は主に以下の三つである。下記に挙げる項目は世界的にも初めての仕事であり、未だに完全には成功していない超新星爆発の精密なシミュレーションに資するという意味では非常に重要な知見である。 1.最も単純な原子核モデルである液滴模型を用いたパスタ相を考えた場合と考えない場合でのニュートリノの透過率の比較により、パスタ相が存在することによって20-30MeV程度のエネルギーを持つ比較的低エネルギーのニュートリノの透過率は著しく上がり、ニュートリノが崩壊中にはコアから抜けやすくなる可能性が高いことを示した。 2.次に、温度が上がることによって、基本的にどのような効果があるかを液滴模型の範囲で議論した。それによれば液滴模型の範囲内ではデバイ・ワーラー因子の影響によってニュートリノの透過率は温度の上昇とともに単調に上昇し、これもまたニュートリノを抜けやすくする方向に働くことを示した。 3.最後に、核子の他体系を核子の自由度から取り扱う手法である量子分子動力学法(QMD)と呼ばれるシミュレーションを用いてパスタ相を再現し、その結果を用いて密度・温度とともにどのようにニュートリノの透過率が変化するかを見た。それによって、液滴模型で予言されるような温度による単調な変化ではなく、温度変化とともにパスタ相間の相転移が起きることによるニュートリノの透過率の不連続的な変化を予言した。
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Research Products
(1 results)