2007 Fiscal Year Annual Research Report
偏極陽子固体標的を用いた中性子過剰核におけるスピン軌道相互作用の解明
Project/Area Number |
06J11398
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂口 聡志 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 不安定核 / 弾性散乱 / スピン軌道相互作用 / 光学ポテンシャル / ヘリウム同位体 / 偏極分解能 |
Research Abstract |
1偏極陽子固体標的の偏極度向上 本研究の主題は、陽子と中性子の数がアンバランスな「不安定核」において、スピンの向きに依存する力「スピン軌道相互作用」がどのように働くかを調べることである。この目的のため、不安定核ビーム実験に特化した世界でも唯一の偏極陽子固体標的を開発している。この標的の特長は、レーザー光及びマイクロ波を用いて、従来の1/25程度の格段に低い磁場で陽子のスピンの向きを揃える(偏極させる)ことが可能な点である。 本年度は、オペアンプ回路の高周波化及び光学系の改良により偏極過程の繰り返し率を向上ざせ、レーザー光強度を従来の2.6倍に増強した。これにより、自然な状態(熱平衡状態)の20万倍に相当する偏極度17%を達成した。散乱実験における測定量の誤差は偏極度の2乗に比例するため、偏極度の向上は本研究に必要不可欠である。今後、レーザー光パルスを高周波化することで、偏極度を更に向上させる。 2ヘリウム8-陽子弾性散乱の偏極分解能測定 不安定核ヘリウム8と陽子の間に働くスピン軌道相互作用を探るため、上記の標的と理化学研究所のRIPSで生成したヘリウム8ビームを用い、散乱実験を行った。弾性散乱の微分断面積に加え、スピンの向きに応じた散乱方向の非対称(偏極分解能)を測定した。この偏極分解能のデータを用いることで初めて、スピン軌道ポテンシャルを精度よく決定することができる。今後はデータ解析・理論解析を進め、ヘリウム8-陽子間のスピン軌道ポテンシャルを導出する。さらに、結果を前年度に求めたヘリウム6のポテンシャル、及び安定核であるヘリウム4等の同位体間で比較し、不安定核に弱く束縛された余剰中性子がスピン軌道相互作用に与える影響を明らかにする。
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Research Products
(13 results)