2008 Fiscal Year Annual Research Report
偏極陽子固体標的を用いた中性子過剰核におけるスピン軌道相互作用の解明
Project/Area Number |
06J11398
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂口 聡志 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 不安定核 / スピン軌道相互作用 / 弾性散乱 / 光学ポテンシャル / ヘリウム同位体 / 偏極分解能 |
Research Abstract |
陽子と6He及び8He間の光学ポテンシャルのスピン軌道項(スピン軌道ポテンシャル)を決定するため、陽子-6He及び8He弾性散乱の微分断面積及び偏極分解能を2005年・2007年に測定した。実験に当たっては、東大CNSで開発した不安定核ビーム実験のための世界で唯一の偏極陽子固体標的を用いた。得られた微分断面積は従来の理論予想とほぼ一致したが、偏極分解能は大きく異なる挙動を示した。 本年度は、これらのデータを現象論的光学模型で解析することで、陽子-6He及び8He間のスピン軌道ポテンシャルを初めて決定し、その形状を安定核と比較した。安定核のスピン軌道ポテンシャルは系統的に5MeV程度の深さを持っているのに対し、典型的な不安定核である6He及び8Heのスピン軌道ポテンシャルの深さは1.3及び2.0MeVであり、著しく浅い形状を持つことが初めて明らかになった。スピン軌道ポテンシャルの形状は一般に密度分布の微分形となるため、6He,8Heのスピン軌道ポテンシャルの減少は、密度分布のぼやけから理解される。 また、中性子過剰へリウム同位体のスピン軌道ポテンシャルの形状の起源を微視的に探るために、密度分布と有効相互作用を用いてα+2nクラスター畳み込み計算を行った。6Heの光学ポテンシャルに対するαコアと余剰中性子の寄与を別々に評価した所、余剰中性子のスピン軌道ポテンシャルに対する寄与は全体の10%程度しがないことが分かった。以上から、陽子-中性子過剰へリウム同位体間のスピン軌道ポテンシャルは、核内で余剰中性子の反跳を受けて運動するαコアと、核外の陽子との間の相互作用によって大部分が構成されていることが明らかになった。
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Research Products
(5 results)